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『...御免くださ〜い.....』
私は、恐る恐る目の前にある戸に声を発した。
〈どちら様ですかィ?〉
いかにも江戸っ子のような喋り方で出てきたのは
綺麗な栗色の髪をした男の子。
『突然すみません...私、土方十四郎さんの幼馴染のAAといいます..』
〈ほぅ...土方さんの幼馴染たァ...
ちと座って待っててくだせェ今呼んできますんで〉
そう言い残して、彼は廊下の先を曲がって行った。
はぁ...
自然と深いため息が出る。
武州にある実家を飛び出して、行く当てもなく歩き続けていたら、
江戸に着いてしまったのだ。
あぁっ...!だからって何で真選組の屯所なんかに来てるんだ私...
「_____なーに頭抱えてんだお前」
...ハッ!!
ゆっくり声のしたほうを振り返ると
...私の大好きな人。
『トシちゃん...』
自然と重い腰も上がる。
「...この年にもなってまだその呼び方かよ」
視線を逸らしバツの悪そうな顔をする
「....んで??こんな所まで遥々何の用だ」
『あ...えっとそれは......』
_____ガラガラガラッ
どう答えようか戸惑っていると、戸が開いた。
〈おや?トシのお客さんか??〉
「あぁ...近藤さん、こいつが幼馴染のAだ
前に話したことあったろ」
”近藤さん”その名にはよく聞き覚えがあった。
この人が昔、両親を亡くしたトシちゃんを...
『はじめまして..!』
〈あなたがAさんでしたか!
こりゃ驚いた!えらいべっぴんさんじゃないか!なぁトシ!〉
「....別に普通だろ」
『あはは本当そんなことないですよ〜
それより近藤さん、いつもトシちゃんがお世話になってます』
深々と頭を下げる私に、
「あのなぁお前....」
『へ??』
後頭部を掻きながら少し恥ずかしそうにしているトシちゃん。
〈ガハハハッ!しっかりしてるなぁAさんは!トシより年下とは思えないよ〉
二人からそう言われて何だか恥ずかしくなり、下を向く。
〈そうだ、もう丁度晩飯の時間だし、二人でどっか食べに行ってきなさい〉
そう言って優しく微笑む近藤さん。
「つーかおめー、俺に何か用があって来たんじゃねぇのかよ」
『.....』
黙っている私に何か察してくれたのか、近藤さんは後押しするように、
〈まあまあ、とりあえず行ってこいや!〉
その言葉を聞いて、トシちゃんは自室に戻り、
着流しに着替えて私とともに真選組屯所を後にした。
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てい(プロフ) - 都さん» 鬼なのにちゃん付で呼ばれる土方殿それだけで可愛くてしょうがないですね(/_;)読んで頂きありがとうございます! (2020年9月30日 23時) (レス) id: 51fbc336c0 (このIDを非表示/違反報告)
都 - 面白かったです!いつもは土方さんって呼んでいるんですが(自分の中で)、今日からはトシちゃんって呼んでみようかなって思いました(笑) (2020年9月30日 17時) (レス) id: 89cdf63d52 (このIDを非表示/違反報告)
てい(プロフ) - 陽渚さん» ありがとうございます(;;) (2020年9月2日 3時) (レス) id: 51fbc336c0 (このIDを非表示/違反報告)
陽渚(プロフ) - すごく良きです! (2020年9月2日 0時) (レス) id: 0a67e21c60 (このIDを非表示/違反報告)
てい(プロフ) - 光華さん» 嬉しいお言葉のコメントありがとうございます(T^T) (2020年9月1日 7時) (レス) id: 51fbc336c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てい | 作成日時:2020年8月13日 16時