桃色の花の蕾【派生作品】 (ページ6)

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非常識野郎【桃也】ページ6

パソコンで事務仕事に取り組む。
まだ生徒が登校してくるまでには早い時間帯で、先生方もいらっしゃるのは数人という所だった。

湯気の立つコーヒーを飲もうと手を伸ばすと、職員室に電話の音が鳴った。
生徒の欠席連絡だろうと近場な俺は受話器を取った。

ガサガサと少し物音が聞こえた。

『はい。青蘭学園の落地です』

俺の声からワンテンポ空いたかと思うと、非常に元気の良い声が耳を劈いた。

「えっと～、花霞ちゃんの先輩で～す！」

この電話の相手が声だけで誰か分かってしまうのが何だか苛立った。この常識のない人間として最悪な野郎を分かりたくはなかった。小学校どころか幼稚園からやり直せ。

低気圧な朝にイラっとくる電話のかけ方、そしてああそうっすか……としか言えない内容にため息をつきそうになる。電話のかけ方のマニュアルをこの人の為だけに作った方が良い。本当に。

「えっと、今日は体調悪いっぽいんで休ませます！」

『あ……はい。了解しました』

とりあえず義務感で返事を返すと、電話はブツリと切れた。

まあでも倒れた次の日に来いというのは酷だから別に構わない。
ただな。なぜ本人じゃなく、その上この人選にした？？

百歩譲って、同い年の湊くんならまあ分かるかもしれない。なんで光希くんなんだ？？

おおよそ二秒の間、頭にクエスチョンマークが反復横跳びする。
抑えていたため息を零して受話器を戻す。

決して良いとは言えなかった態度にイライラとして貧乏ゆすりをする。
別にあの人は悪くないが、もし会ったら美作先生に愚痴を言おう。「アンタの先輩大丈夫か」とでも。

常識知らずな人間は嫌いだ。まだな、学生なら良い。だが電話の相手社会人として世に出てる人間だよな？？なんなら俺の学年二個下だったよな？？
俺がまだ制服を着て彼の入学ライブを見たという古き記憶がぼんやりとあった。

声が良かったし相手がイケメンなのでまあ許すが、そんな贔屓目無かったら受話器地面に投げつけてたぞ。俺が顔贔屓するタイプで良かったな。職員室の備品が一つ守られたぞ。

朝からイライラとし、今日はあまり良くない日になるだろうと思った。
弁当も余るし。一人で二人分食えるかよ。海貴に全部食わせりゃ良かったわ。弁当取りに来させようかな。

結局は休んだあの人にも多少の苛立ちが芽生え始めた。理不尽だが貴方の先輩が悪い。しっかり教育してください。