流星群の奇跡【後編】

55 K ページ6

ジタバタと悶えてるとガタンと音が聞こえてきて、
ぐっと腹に力を入れ直し、上体を起こす。
こんな姿をニカに見せる訳にはいかない。


「いい湯だった〜」


肩にタオルをかけて、カシャカシャ髪を拭いている。


「水でも飲む？」


そんなリラックス状態のニカの横を通り過ぎ冷蔵庫を開ける。



「ありがと！ミツはいい嫁さんになるね！」
「……なんでだよ」
「だって、ガヤが彼氏でしょ？」


言われてみれば、藤ヶ谷は彼氏になるのか？
いや、彼女？
そんなところまで気は回ってなかった。
ただただ好きで、触れたいとは思うけど。



冷凍庫から氷を掬い、グラスに3つ落とす。
そのグラスに、冷蔵庫から取り出した水を注いだ。



「その…」
「そこハッキリしといてよ！俺だって混乱してんだよ？ミツがガヤを好きだったってことにもビックリしてんだからっ」
「わ、わり」
「それによって俺だってガヤへの接し方があるんだからさ、」



接し方……
彼氏か彼女かによって…違うのか、
そりゃそうか…さすが先輩だな、……って！



「や、お願いだから藤ヶ谷に触んなよ！間違っても…そのき、キスとか…！」



体は俺でもやっぱ嫌だ！
アイツはニカを求めてるって分かってるけど…
複雑すぎるこの気持ちはどう消化すればいいのか。
付き合って、と頼んだくせに…触れんな、と支離滅裂のことを発してしまった自分の口を手で押さえた。


「ったり前じゃん！しないわ！」



……想像したのか宙に浮いた目が首を横にぶんぶん振った後、俺を捉えた。
はっと胸を撫で下ろす。


「ならおまえは…やっぱその、その千賀の彼氏、なんだよな？」


ニカが強引に…って言ってはいたけど…念の為。逆だってまあ、無くはない。
二階堂が彼氏側だとは思うけど、直接は聞いてなかったし。


「そんなの俺が彼氏に決まってんじゃん」


…だよな。


「多分だけど、ガヤは彼氏の気でいると思う」
「…俺は、別に…アイツと付き合えればどっちでも…いいって言うか、」


顔を見れず俯いたままグラスを手渡すと、
二階堂は「ありがと」となぜか両手で受け取った。



「ミツ…健気すぎる、可愛い…」



自分の声に可愛いって言われても、全然嬉しくねぇし。バカにしてんな、こいつ。


「べ、別に可愛くねーし」



また素直になれず、離れた木製の椅子に腰掛けた。



「任せて！ミツの気持ち受け取ったからね！」



彼女役出来るか不安だけど頑張るから！とガッツポーズして立ち上がったニカを見上げた。

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