流星群の奇跡【後編】

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藤ヶ谷から届いたメールには位置情報と店のURLが貼り付いていた。


待ち合わせの21時。
タクシーで送られた店へと向かってガラリと入る。
店員さんは俺の顔を見るなり、察してくれたのか「伺っております」と、二階の個室へと案内をしてくれた。


個室中心らしい広めの通路を通ることもなく、出入口付近の階段から上へと上がった。



段差で靴を脱ぐ。そして、引き戸を開ければ、藤ヶ谷が手前に座っていた。



俺は必然的に空いてる奥の座布団へと座る。



俺はまだ落ち込んでんだぞ。
昨日、すぐ寝ちまって。
なーんて、態度に出せるわけもなく、いそいそと渡されたお品書きを見る。



こんなふうに向かい合って、飯を食べるなんて
顔は熱くなる。赤くなってないだろうか。
オレンジ色の照明で顔が赤くなってしまってるのが隠れていればいいけど……


早く酔ったせいにしたい。


すかさずビールを注文した。



「やっぱり北山が食べてる姿が一番可愛い」


そんなことを平然といいのけるから、何とも恥ずかしくて、箸を置いて、横の壁に立てかけてあった黒色の分厚いお品書きを前へ移動させて



壁を作った。



幸せすぎて、本当は食欲なんてねーのに。



その壁にしたお品書きを奪われる。



「何で隠すんだよ。昨日はごめん。俺ローストビーフまで作ってたのに、寝ちゃって」
「……ローストビーフ？」
「うん。だから今夜の二次会はまたウチでいい？」



……ローストビーフ、
藤ヶ谷が作ったローストビーフ、
しゃあねーな。
許してやっか。


コクリと頷いて、目の前の生春巻きを頬張った。



＊



藤ヶ谷の家での二次会、それは今夜こそ…
もう匂いだって大丈夫だし！


意気込んで、タクシーを拾いに藤ヶ谷の後ろを歩く。


今日は星は見えなかった。でも月は綺麗だった。



「……あ」


そして、立ち止まって気づく。
一本道が違っただけで全く気づかなかった。



ここは……



あの歩道橋だった───…



ニカと入れ替わったあの場所だった。
店の暖簾がゆらゆら揺れている。
風が吹く。

すげー偶然だな……


まるで何かに導かれるかのように。
だって俺はこの場所のことを伝えてないから。



「先どうぞ？」
「え？」
「階段上る時は、彼氏が後ろを歩くもんなの。万が一落ちた時守れるでしょ？」
「……あ、ありがと」



そーいえばさっきは、前歩いてたな…
階段を降りる時……
マジ紳士だわ、さすが……
促されるまま足を上げて階段を踏み込んだ。

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