流星群の奇跡【後編】

95 K ページ46

「千賀、色々迷惑かけてごめんな。二人のおかげで俺は藤ヶ谷と」


ちゃんと礼も言えてなかった。
改めて礼を言うと、千賀はへらりと笑った。



「俺、逆立ちあんま得意じゃねーけど、頑張るから。その」


藤ヶ谷への想いが叶う訳ないと想って、宣言したこと。それはニカが結んでくれた、奇跡の始まりだった。



「え？必要ないでしょ。だって、ニカ関係ないじゃん。元々二人は惹かれ合ってた、ただそれだけじゃん」
「……せんが、」
「だから、逆立ちなんてしなくていいよ！」



ニカだけじゃない。千賀も成長している。
本当に優しくて、可愛くて、グループのムードメーカー。
最年少だとは思えない程の潔さを感じ、ぐっと心が掴まれる。




「それに俺も謝らなきゃ。宏光の許可を得ずに、ガヤさんに言うって言うニカを止めなかったから。」
「……まあ、でも仕方なかったんだろ？藤ヶ谷に聞いた」
「あー、うん。実はね、あれね、ここだけの話仕組んだことなんだ〜」
「え…どういうこと？」



ドリップし終えたコーヒーカップをおぼんに置いて、座ってとダイニングテーブルへと促される。
湯気がたち、もわんと漂う香りに動揺し始めた心は落ち着きを取り戻した。



「ガヤさんに目撃してもらって言い出すキッカケを作ろうってニカが。あん時さ、覗いてガヤさんが歩いてくるのを確認してから実行したの！」



全ては、二人が俺と藤ヶ谷を想ってのことだったとは……。
もう、本当に。



恐れ入ったわ。



「心から想いあってる二人にニカが気付いたんだよ」



そう言った千賀の顔は何とも綺麗だった。
ただメンバーを褒める、だけじゃない。


その眼差しは
心からの、尊敬、愛しさ、信頼、そんな数々の灯火を秘めているように見える。




「……千賀もな。よく俺の姿のニカにも辛抱したな。辛かったろ？」
「えっ別に？宏光もかっこいいしー」



肌なんて綺麗で、たくさん化粧水つけてあげたよー！って楽しそうに笑ってるその奥の扉から、風呂上がりの二階堂が入ってきた。



肩にタオルを乗せて、見慣れた姿。



ちょっとまださすがに親近感あるわ。



「ちょっと…千賀、堂々と浮気…？」



すげー怖い顔
あーもう愛がダダ漏れで居心地わりー。



「や、冗談！ニカが一番かっこいい！」



コーヒーカップを置いて
そんな慌てる千賀の横に立ち、真っ直ぐ二階堂に向かって頭を下げた。



「ちょ、ミツ？！」
「二階堂、本当にありがとう」


ニカの体にも、そう感謝を込めて。

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