流星群の奇跡【後編】

94 K ページ45

藤ヶ谷って、なんつーが焦らしプレイが好きなのか
Sっ気が強いのかただの天然なのか、


それともいざ俺を前にすると
キスやえっちを躊躇したのか……



ことの真意は分からず、朝を迎えた。
薄ら夢を見た気はするが、正直全然眠れなかった。
眠りは浅く、ほぼほぼ頭の中は起きていた。


だから、ブラインドの隙間から見える微かな朝日にも充分気づけた。



虚しくなって、
とりあえず、仕事だから帰ろう。


ムクっと起きて、ベッドから落ちていたベア北山を掴み、枕の上に置いて、立ち上がった。



藤ヶ谷はまだ無反応。
つーかずっと無反応。
眠ってる。



洗面所に行き、ドラム式洗濯機から乾燥まで終えたシャツとカーディガンを取り出して、そのまま着る。
代わりに着ていたパジャマをそこに投げ入れた。



『おはよう。今夜の待ち合わせ場所また連絡して』


そう書き残して、部屋を出る。
本当に恋人同士、でいいんだよな？
昨晩の藤ヶ谷に不安になる。


やっぱり俺じゃなくて、ニカの体が好きなんじゃ……


だって普通寝るか？！



はぁー


盛大なため息を朝からこぼして、二階堂の家へとタクシーを向かわせた。



二階堂とは連絡がとれた。
千賀もいるけど…と。
へいへいさぞかしお熱い夜だったんでしょうね。



犬並みの嗅覚を持ち合わせた藤ヶ谷に今日こそは匂いの言い訳をさせないために、シャンプーとか一式戻さねーと。



戻れた余韻に浸る暇もなく、俺は藤ヶ谷に愛されるために必死だった。





＊



「いらっしゃい」


早朝にも関わらず、出迎えたのは千賀だった。
冬の始まりの早朝、今日も割かし冷えるのに、薄着の千賀はきっと寝たままの格好なんだろう。



「ニカ今シャワー浴びてるから」



怠そうに腰を擦る千賀がキッチンへと向かう。
その背中に一瞬呪いをかけそうになった。
単に羨ましい……だけなんだけど。


コーヒーの香りが鼻先を掠める。



「宏光、戻れて本当に良かったね。ガヤさんにいっぱい愛して貰えた？」



ニカに聞いてるんだろう。
当たり前のように訪ねてくる千賀に、きゅっと眉を寄せた。



「……まあ、つか、千賀の匂いが俺の服に染みついてたんだけど！」



濁してちょっと文句を垂れて発散してみる。
俺もいい歳して子どもだねー



「あ、ごめん。美容液こぼしちゃって。分かった？」



よりによって、俺の服に……
はぁーでも、感謝をすれど文句を言うなんてお門違いだよなあ。

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