流星群の奇跡【後編】

86 F ページ37

「俺は今お前が……北山 宏光が伝えてくれたのと同じ長さ同じ想いで時を刻んでたの。俺もずっと前から……北山を愛してる」



ぎゅっと抱きしめる感触が思い描いたものじゃなくても。



「だから俺の細胞はきっとどんな姿の北山も見つけることができる。」



長年共にしたメンバーでさえも気づかなかった違和感を感じることができる。



「結局、どんな姿の北山も愛しちゃうみたい」



君は俺のすべてだから。



「すぐに言い出せなくてごめん。悩ませてごめんな」



まさか入れ替わったなんて発想にはまだ至ってなかった。でもきっとこれが続いてたら…俺は…



「ちょ、と、頭がついてこねえ」


気付けたかもしれない。
腕の中の北山は、もごもごと喋って俯いたまま突っ立ってる。その体はビクリとも動かず固まってる。


「……藤ヶ谷は俺の姿のニカが好きだから告白してくれたんじゃねえの？」



へ？
消えるような声で、僅かに肩が震え出す。
何言ってんの、この人。



「ニカだから映画に誘ってくれたんじゃねえの？」



ぷるぷるぷると。
あーあ、そんな勘違いさせちゃったのか……



「今の聞いてなかった？俺は20年近く北山を愛してんだけど。ニカを映画に誘ったのは事実だけど、それは北山の面影をニカに感じたからで…自分の気持ちを知りたくて」



んー、確かに言い訳に聞こえなくもない。
ニカに揺れたのは事実で
でもそれは北山だからで…



やば
混乱してきた。


ニカと俺は身長差が近いから、
抱きしめても包み込める体勢にはならない。
もどかしい…
やっぱり北山の体を抱きしめたい。



でも、



「……自惚れてもいい？」
「ん？」
「……どんな姿でも俺を、北山 宏光を求めてくれてたって、」



かわいいよ、ほんとに。
北山は、俺の中で、カッコよくて可愛くて
最強で最愛の人だ。



「それは自惚れなんて言わねーよ。事実だもん」




長年の片想いがほんとに叶った瞬間。
顔を赤らめる腕の中に居る人は、最愛の人だけど、体は違う人。



その人を抱きしめて、甘くなってきた雰囲気、実ったこの瞬間…


この先は……



本来ならば、甘い口付け…だと思うんだけど、



「北山だからキス、したいと思うけど…」



この場合は、気を使って何もせず離れるのが正解なのか…
でもそれは北山だと認めてないようにも思わせてしまうかもしれない。



「……いや、ニカにあげたくない」


北山は小さく横に首を振った。
なにこれあーもう。可愛すぎて倒れそう。

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