流星群の奇跡【後編】

87 F ページ38

「ダメだ……北山、」
「え？」
「かわいすぎる……」


可愛くて、悶絶してしまう。
とりあえずこのままだとその破壊力に骨抜きにさせれそうで、ぱっと体から離れた。


だって、俺の目にはちゃんと北山に映るんだもん。
長年の付き合い、この恋心を持ち合わせてた俺にはちゃんと。



「……なにそれ。ほんとはニカのことカワイーって思ってんじゃねえの。俺可愛くねーし」



拗ねたように、一瞥したあと、俺が入れた冷めたコーヒーまで二三歩進みグイッと呷った。




「んなことないけど。…そんなにニカに嫉妬するぐらいなら早く戻ってよ」



戻れるかもしれない方法がひとつあるとはニカに聞いていた。
それは北山からの案、でも確実ではないそう。
入れ替わっちゃった当初は互いの存在になりきるために必死だったが、慣れ始めた頃、不安が顔を出し始めたとも聞いた。


ニカも不安になっていた。
このままミツに体を返してあげれなかったら
ミツはほんとの幸せを手に入れられない……と。



ライブの演出までも手掛けるニカは本当に大人へと成長していて、昔の不貞腐れてた頃が少し懐かしくなった。


人は成長をする。
昔には戻れない。
どんなに懐かしくなっても過去の自分たちには会えない。



自分だって戻れない不安を持ってるくせに
北山の心配をして、俺に北山を託してくれた。



北山の抱いてるその不安を俺に拭えるだろうか…
引き出したくて、敢えて軽口をたたいてみた。



マグカップ片手に固まって佇んだままの北山をソファに座って、見上げる。



「おー！任せとけ！秘策があっから。つか嫉妬してねえし」



だけど見透かされぬよう視線を外した北山。
やっぱり弱さはそんなに簡単に見せてくんねーか。
長年の培った関係性、
さっきまでの素直さは、ニカの力を借りたんだもんな。


メールでは素直なのに。



「その秘策って何？」
「え、ああ……」
「教えてよ。俺の死活問題でもあんの！俺はお前の外見も好きなんだから。キスまでは出来ても…さすがにニカの体を抱くのは抵抗あるし」
「だ、抱く？！」


慌てふためく北山は、マグカップを持ったまま何故か円を書くようにその場で一周回った。
あれ、チェリーボーイには刺激が強すぎたかな？



「ああ。俺は、体も心も北山な北山を抱きたいから」
「………、戻れなかったらどーすんの」


照れ隠しばかりする北山とは話が脱線してしまう。
その顔は俺だけが知ってるって思ってもいいよね？

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