流星群の奇跡【後編】

81 K ページ32

「マジで知らなかった…信じらんね」


続く満更でもない嬉しそうな呟きを聞いて、少し安心した。あれ……
俺しくじってない？



「北山がそんなにも俺のこと……」


神妙な面持ちだった藤ヶ谷の顔は明らかに笑みを浮かべ紅く染まっていた。その視線は、俺じゃなくて違う所を捉えている。



分かってくれて、良かった。
これで別れたいなんてことは考えねーよな？
それにこんなにも重い想いを受け入れてくれるっつーことでいいんだよな？



「うん、好きだって聞いてる」


俺は、俺を捉えない藤ヶ谷にそう更に伝える。
ニカを映さないその瞳。
それは、もう今の俺には興味がない、ということ。


藤ヶ谷の気持ちは今俺に向いていて、思い出してくれてるんだろう。



こんなに伝えることができた愛の告白に満足しながらも、若干の虚しさはどうしても拭えない自分は本当に欲深いし……
安心したのと同時に切なさを抱くなんてマジで烏滸がましい。


藤ヶ谷に煙たがられない程度に、自分を売り込む。



「ミツはチャラそうにしてっけど、ああ見えて一途だし、ガヤのこと大切に思ってると思うよ。千賀のことは俺が聞いてみるし、また報告するから」



俺からアイツらにやっぱり注意はしとかねーと。
せめて仕事場で辞めろと。ちょっと放任しすぎたかもしんねーし。
不安から隠しきれてねーんだろうが、やっぱりそれとこれとは別だ。



今までちゃんと隠し通してきたんだから
少し気をつければ出来るはずだ…よな？



「うん。北山が一途なこと今知れてめちゃめちゃ嬉しかった。それに…」



すっ、とずっと拳を握っていたその手の甲が温もりに包まれた。
あれ……？
その温もりに焦るのに、一気にぶわって緊張が込み上げてきて動けなくなる。息も止まった。微動だにせず、体の全てが止まる。
心臓と脈だけは、早い。



「ニカには聞いたから」


ん？ニカに、は、？
続いたその連語の意味が汲み取れず、繋がらない。
そこはニカ「に」じゃねーの？俺でしょ？



この重ねられた温もりにやっと反応できて、
藤ヶ谷の方を首を傾げながら向く。



藤ヶ谷の切れ長な瞳はしっかりと俺を見つめていた。
あーあ、この瞳好きだ、
鋭くって、だけど何も悪いことしてなくても自然と口は「ごめん」と言いそうになる。
俺にとっては、それだけ絶対的な圧があった。



藤ヶ谷は俺の、すべてだから。



「あ、うん。ごめんね。何か部外者なのに熱くなりすぎちゃった」


へへっと嘲てみた。

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