流星群の奇跡【後編】

77 K ページ28

印象は藤ヶ谷らしい部屋。
引っ越し後の藤ヶ谷の部屋に初めてこうして入れて何か感慨深い。
一見シンプルに見えて、やっぱり小物が多く藤ヶ谷の好きなブランドが垣間見れる。


部屋には、本人が気付かないところで生活臭が漂うもの。藤ヶ谷らしい部屋のレイアウトに胸は踊り、胸いっぱいにバレぬように息を吸った。


部屋の至るところに藤ヶ谷の香りが充満していて、それだけでもうほんとに、瓶があれば入れ込みキュッと蓋をキツく閉めたいぐらいだ。
そんなことしても香りは持ち帰れないが、気持ち的にはそんな狂気的な部分も藤ヶ谷に関しては芽生えちまう。



既にリビングのソファに通されて、藤ヶ谷が入れてくれるコーヒーを待っている。
お構いなくと断りを入れたけど、藤ヶ谷の気が済まないらしい。日本人のおもてなし精神をモロ受けてる分類だよなぁ、礼儀正しいし。こんな容姿で礼儀正しいってなんなのどこまで完璧男子なの。



……さすが俺の好きな人。
なんつって。



完璧じゃない、いたずら子っのおちゃらけた藤ヶ谷も好きだったけど……
何度も困らされた事実は否めねーけどさ。



借りてきた猫状態の俺は、膝の上で拳を握り、背筋を自然と伸ばして待っちゃって。
また俯いて湯を注いでるだろうシステムキッチンにいる藤ヶ谷の目を盗んで大きく息を吸って、小さく吐いた。
匂いも感じて、落ち着かせるために深呼吸もでき一石二鳥だ。



俺は、今二階堂だ。
アイツにはわりーけど多少の粗相なら許される。
そんなキャラを持ち合わせてる二階堂の人柄に感謝だな。




「お待たせ、そんなに固くならないでよ」
「え、あ、ありがと」



やべ
固くなってるのバレてんじゃん。
崩さなきゃ、二階堂ならきっとソファの背に腕を伸ばして、ひろーいとか柔らかーいとかいって寛いだりしそう、だな……


つか、アイツここに来たことあったりする？
情報が無さすぎて、困る。
スマホを弄るチャンスもなかったし。
だから部屋の感想も何も言えず、俺は「お邪魔します」と「お構いなく」としか極論発せれていない。




「ソファほんとフカフカだねぇー」


腕を伸ばして広げ、寛ぐように尻でジャンプして見せてみる。
この「ほんと」はどっちでもとれるように選択してみた。「前も座ったけどほんとに」だったり「こんなフカフカなソファ座ったことない」のほんとだったり。



逆立ちの時と同じ。
その言葉の意図はきっといくつもある。

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