流星群の奇跡【後編】

64 F ページ15

昭和レトロの雰囲気を持ち合わせるノスタルジックなペンダントライトの薄明かり。
ステンドガラスのようなものでいくつもの三角形が交互に重なり、クリーム色の半球を作り出していた。


内側から鮮やかな光を放っていた。
少し狭めな個室に、四人掛けの掘りごたつ。
テーブルの上には、枕型のうるし箸置きに箸袋の先が揃えられていた。


縦長の長細い窓には、雨の雫がぽつぽつと張り付いていた。水が玉になって、外のネオンがギラギラと滲んでいるのを眺めながら、腰を下ろした。



おしぼりで手を拭きながら
ドリンクを注文した後、パタンと閉まった襖を確認して、向かい側に座る目深にキャップを被った黒縁眼鏡姿の親友の顔に目を向けた。


親友の背後の壁は、木製の彫刻で花模様があしらってある。
それがいやに繊細で、目を惹かれた。



「たいすけ〜」



渉ではなく、僅かに外した箇所を見ていた俺に気付いた渉が、目の前でパタパタと脱いだ帽子を振った。



「あ、ごめん。」



我に返り、ぱっと渉に視線を戻すと、見慣れた白い歯を見せていた。
柔らかい灯りで、笑窪に影ができる。



「わかりやすいわ、本当に。ミツの代わりになれなくてごめんなさいね〜」
「わたー！そんな事言わないでよ、ごめんて！」



渉を今日誘った時、「ミツはいいの？」と聞かれていた。その時咄嗟に「北山には断れたから」と返してしまい、「はぁーん。俺はミツの代役ですね〜」と拗ねてしまった。


わざとらしくもそう話題にしてくれるから、
北山のことを切り出しやすくなる。
渉のそういうところ、本当に好きだった。


北山と付き合えることになった、告白が成功したことを報告した時は、自分のことのように喜んでくれたし、同じように興奮してくれたのか、美声が3オクターブ程高く裏返った。
昔から北山の前では素直になれない俺の反省会をずっと辛抱強く聞いてくれていた。
時には北山との仲介役まで買って出てくれて。



何度も頼ってきた。
そして、今夜も例外なく絶賛頼ろうとしてる。


ドリンクと小鉢が運ばれてきて、いくつかまた注文して、グラスをカチンっと合わせて、口元まで持ってきて、グイッと飲む。



「で、ミツとはどうなの。今日ミツ予定あって残念だったね」



自分の話を始めるより、まず俺の話を聞こうとしてくれるそんな渉に甘えつつ、グラスをコースターの上に置いた。

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