59 F ページ10
毎日のメールで、北山に夢中になっていた。
メールが楽しくて、ニカへの迷いなんて払拭されてると思ったし、むしろ正直に言うと忘れていた。
ああ、北山に思い切って告白して良かった、って。
千ちゃんとのことは心配だけど、北山が俺を好きだと言ってくれた。
信じられなかったが、日々のメールでそのふわふわ浮いていた疑念は薄れていった。
北山もこんな俺を好きだと思っていてくれた、という言葉を噛み締めるように、現実味を帯びていった。
マジで夢のようで信じられないけど。
そんな状況で、ニカとのラジオ収録に挑んだ。
前に仕事があったからか、開けたら既にニカがいた。
ちょっと戸惑った。
ニカが台本を持って立っていたから。
先にスタジオへと行くつもりだったのだろうか。
そんなニカを引き止めるように、声をかけると…
明らかに戸惑うような仕草を見せた。
その仕草はやっぱりアイツと重なる。
「あーそいえば…これ」
星が散らばった黒ベースのパンフレットが差し出された。その手は、僅かに震えていた。
なんで、震えてるのか。それは一緒に観に行った作品のものだった。
表紙に記されている作品名。
受け取ることも忘れ、ニカから目が離せなかった。
「これは…?」
掴む親指が微かに動くパンフレットとニカの顔を交互に確認する。恐る恐るという表情をしていたニカの顔は、笑顔へと変わった。
「この前の御礼。映画代とか全部出してもらったのに何も返せなかったから。だから買ってたんだけど渡しそびれちゃって」
御礼なんて、いらない。
俺が行きたかっただけなんだ、
おまえと……
「……俺のために、?」
信じられないくらい胸が弾んだあの日。
戸惑った自分の想いを消すように、閉じ込めた。
次に会う予定は、決められなかった。
俺は、今はもう北山だけたがら。
ずっと想っていた恋が報われたから。
毎日幸せだから。
「いらなかったら、捨てちゃっていいから」
俯いたニカに、自然と手が動く。
「……捨てるわけねぇじゃん」
その震える手から、パンフレットを受け取った。
「……ありがと、ニカ」
俺の知ってるニカはこうして、気をつかって買っておいてくれるというイメージはなかった。
だからこそ、気兼ねなく接することができる。
でも、今目の前のニカは…
まるで俺の特別な北山みたいで。
ちょっと胸が苦しくなった。
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ももは(プロフ) - すーさん» すー様ー!!いつもありがとうございます!お返事が遅くなってごめんなさい(><)わわ!一気に読んでくださりありがとうございます(;;)入れ替わりのお話が苦手にも関わらず読んでくださりとても嬉しいです!心を求めてるFさん、書いてて私もニヤつきました…!|ω`) (2020年7月12日 12時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
すー(プロフ) - ももは様ー!!今更ながら一気に読みました!!!正直入れ替わるお話は難しくて苦手なんですけど、このお話大好きです(;_;)入れ替わっていてもKさんの心を求めているFくん…2Sもとても良い…結果皆良すぎる…読んで良かったです(*^^*) (2020年7月9日 22時) (レス) id: ab6ce27cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - りぃ☆彡さん» りぃ☆彡さん!いつもありがとうございます!お返事が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。2sグッジョブでした…!FKも何とかハピエンにできました…☆本当に最後までお読み頂きましてありがとうございました!感謝しています(/ω\) (2020年7月5日 22時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ☆彡(プロフ) - ももはさん!完結おめでとうございます!2sがグッジョブでしたね!弟組はいつの間にか成長したんだなぁとホッコリしました。FKも無事ハピエンで良かったです!葉桜〜更新楽しみにしてますね! (2020年6月29日 22時) (レス) id: de1f37d540 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 喜友名 立子さん» また、機会がございましたら他の短編集で書いてみたいと思ってます!私も今作の2sの日常を地味に書いてみたいなぁって思ってました!少しお時間をいただきますが、その際は是非お読みいただけると嬉しいです♪本当にありがとうございました…! (2020年6月28日 17時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2020年6月7日 7時