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料理なんて出来ないけど、こっちに居れる時間は残り僅かな気がして、藤ヶ谷のために、料理を始めた。書斎で見つけた雑誌を片手に。
日記以外にも見つけたそれは、ある頁に付箋が貼られていた。
「あっちっ、」
蓋を開ければ湯気が、顔面に広がる。
こっちの俺がその付箋のモノを作ってあげようとしたのか、既に作ってやったのかは分からない。
ただ、それを見て俺も作りたいと思った。
牛肉の中華マリネ、簡単じゃんっつてレシピ見て思ったのに、意外と上手くいかない。
それにこれは俺が食べたかったものでは、と思う。
もうひとつの付箋、タンドリーチキンも作る。ヨーグルトにはちみつにと調味料が多くてこっちのが揃えるのに手間取った。
あたふたしてると、マネから借りていた携帯からブーブーと振動音が聴こえた。
手が汚れていてすぐ出ることができず、慌てて洗い電話をとろうとすると、切れてしまった。
掛け直そうとすれば、すぐにまた震える。
画面にはやっぱり藤ヶ谷の名前が表示されていた。
通話をタップして、耳にあてれば荒っぽい声が耳の奥をキーンと刺激した。
『何で出ないの!』
「わり、ちょっと手が離せなくて」
『……きたやま?』
「へい。藤ヶ谷のことが大好きな北山くんだよ」
不安そうな藤ヶ谷にそっと返した。
『今、走って向かってるから!』
「んあっ、気をつけて。」
男前なくせして、
本当に可愛い。
どっちが彼女か分からなくなる。
やべー、逢いたいよ。
こっちの世界の藤ヶ谷も好きだけど、
自分の世界の藤ヶ谷にも逢いたい。
きっとさ、こっちの世界の俺も想ってるだろ?
もし、俺の世界に居るのならば、こっちの世界の藤ヶ谷に逢いたいって。
自分自身に嫉妬するほど、愛してしまってるから。
瞼をそっと閉じながらスマホを再びカウンターに置いた。
*
筈なのに、次瞼を開けたら目の前は数日前まで見慣れた真っ白な天井だった。
後頭部を受け止めてるのは、ふかふかの枕だった。
沈む。藤ヶ谷の腕じゃなくて、ずるりと後頭部をずらし、顔を横に向ければ、暗闇に背中が見える。
シャツをパッと羽織るところだった。
振り返ったのは、気怠げにしている藤ヶ谷。
昨夜は、盛り上がったのか?
ここって、
「おはよう、ごめんな。起こしちゃった?」
「……」
甘い声、愛しい仕草。
元の世界だ…!
なぜか、俺は裸だった。
「ま、まじか」
入れ替わった俺に手を出した事を察した俺は飛び蹴りをお見舞いした。
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まいまい(プロフ) - 無事に還ってこれましたね…でも別れている世界線の2人がまだ結ばれてない!!どうかどうかそっちの2人とYさんのこともよろしくお願いします!! (2021年6月9日 11時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 1632さん» 1632さんっ!いつもありがとうございます!もうすぐ他の長編が完結するので、こちらも執筆始めます…!長らく更新せず、遅くなってしまい申し訳ございません(;▽;)本当にいつもありがとうございます!感謝でいっぱいです! (2019年10月6日 11時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
1632(プロフ) - こんにちは、北山くん戻れてよかったです!もうひとつの世界の北山くんも幸せになれたかすごく気になります(><)続き楽しみにしております! (2019年10月3日 21時) (レス) id: a09880b79d (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 魚さん» 魚さまっー!わわー!今作もご覧頂き本当にありがとうございます…!嬉しすぎます(;▽;)いつもありがとうございます!はい!飛び蹴りくらっちゃう恋人のFさん、書いてて楽しかったです!更新またしたいと思いますー!違う北山くん目線、少し不安ですが〜!書きます☆ (2019年9月4日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 飛び蹴りを食らっちゃう藤ヶ谷さん可愛くて思わず笑ってしまいました!笑 元の世界の北山くんに出会えて何より嬉しいですよね〜(*^^*)! お仕事大変そうですが、お体大切にしてくださいね。゚(゚^ω^゚)゚。!更新また楽しみにしてます〜! (2019年9月2日 1時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2019年8月15日 22時