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「そう。局の廊下でね。太輔が通るのを知ってて、マイコ役の子にキスしたんだよ。それから、その子と付き合ってるの」
「……はあーー?!」
淡々と話す横尾さんの話の内容は何とも衝撃的だった。
なんで。
誰だよ。マイコ役の子って。居すぎてわかんねえし!
藤ヶ谷以上に可愛くてカッコイイ人なんているわけねぇじゃん…っ!
「あーあ、バレちゃった。って太輔に言い放ったんだよ。俺も太輔の隣に居たから、嘘じゃない。」
「……最低、だな。」
「あの時の太輔は見てられなかった。」
「……、」
「やっと吹っ切れたのに、掻き乱さないでやってほしい。ミツだけど、君はこの世界のミツじゃないんだから。」
正論を突き付けられてぐうの音も出ない。
反論したいが出来ず、口を結ぶ。
横尾さんが嘘をつくとも思えないから、本当だと思う。だとしたら、こっちの世界の俺は、藤ヶ谷の事を好きじゃなくなったのか、信じられないがそれが真実なのか。
でも、俺は藤ヶ谷が好きだ。
藤ヶ谷が目の前にいるのに、冷たくされるのは嫌だ。エゴだと分かっても、嫌なものは嫌なんだ。
こっちの世界の俺は、いったい何をやってんだ!
そんな最低なことを、平気でやってしまうヤツなのか。
頭を抱える。
事実なら距離を置かなければいけない。
早く帰りたい。
「……分かったよ。横尾さん、心配かけて悪かった。藤ヶ谷は俺の知ってる藤ヶ谷じゃないんだもんな。こっちの世界の俺と同じようにしなきゃ、世界を変えちまうって事になるんだよね。」
それは、あっちに行ってしまったかも知らないこっちの世界の俺にも申し訳ない。
悩みながらも、そのマイコ役の子を選んだのかもしれないし。やっと藤ヶ谷だって、俺の事なんて忘れて上手くグループでは立ち振舞っていたのかもしれない。
こっちの俺が戻ってきた時、また雰囲気が悪くなってたら、せっかく積み上げてきていたモノを壊すことになってしまう。
こっちの世界の俺も俺自身なんだから、藤ヶ谷以外を愛すなんて想像もつかないが、捻じれた空間の中では、何やら違う部分が生じても仕方ないのかもしれない。
「……うん。分かってくれればいいよ。さすが、ミツだね。」
安心したように硬い表情を解いた横尾さんは、背筋を伸ばし、背もたれに背中を預けた。
「じゃあ、先に行くわ。撮影、頑張ってね」
「ありがと。これ、ご馳走様。」
頼ろうとしていた藤ヶ谷を失い、俺はこの世で一人になった感覚に襲われていた。
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まいまい(プロフ) - 無事に還ってこれましたね…でも別れている世界線の2人がまだ結ばれてない!!どうかどうかそっちの2人とYさんのこともよろしくお願いします!! (2021年6月9日 11時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 1632さん» 1632さんっ!いつもありがとうございます!もうすぐ他の長編が完結するので、こちらも執筆始めます…!長らく更新せず、遅くなってしまい申し訳ございません(;▽;)本当にいつもありがとうございます!感謝でいっぱいです! (2019年10月6日 11時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
1632(プロフ) - こんにちは、北山くん戻れてよかったです!もうひとつの世界の北山くんも幸せになれたかすごく気になります(><)続き楽しみにしております! (2019年10月3日 21時) (レス) id: a09880b79d (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 魚さん» 魚さまっー!わわー!今作もご覧頂き本当にありがとうございます…!嬉しすぎます(;▽;)いつもありがとうございます!はい!飛び蹴りくらっちゃう恋人のFさん、書いてて楽しかったです!更新またしたいと思いますー!違う北山くん目線、少し不安ですが〜!書きます☆ (2019年9月4日 21時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 飛び蹴りを食らっちゃう藤ヶ谷さん可愛くて思わず笑ってしまいました!笑 元の世界の北山くんに出会えて何より嬉しいですよね〜(*^^*)! お仕事大変そうですが、お体大切にしてくださいね。゚(゚^ω^゚)゚。!更新また楽しみにしてます〜! (2019年9月2日 1時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2019年8月15日 22時