囲われたミツと花【前編】

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仕事中、何度も時計を見ていた。
腕時計、ディスプレイに表示されてる時計、この部署の軸となってるオフィスの掛け時計。


何時に起こるか分からないが、恐らく必ず今日それは起こる。


スマホを取り出し、監視カメラのアプリを開いても、まだ動いた痕跡はない。
今までも宏光は、俺のサンダルを履いて外へと出ていた。



そんな画面を見てる時にちょうど、宏光が映る。
外へ出ようとしてるところで、腕の中には、あんこはいなかった。
…なんて、ツイてるんだろう。


急いで、依頼相手に電話をする。
過去に貸しを作っておいた相手だ。
ちょうど玉森の容姿に似てるソイツを思い出し、金も積み依頼をかけていた。


致命傷と性的暴行以外の手を使い、もう外に二度と出たくないと思わせる程の恐怖を植え付けるようにと指示していた。
電話に出たソイツは、ずっとスタンバってたらしく、後は無事に終わらせたという報告を待つばかりになった。



馬鹿の一つ覚えのような、お仕置き。
でも、自分の手を汚さず…宏光を外に出さず囲うためには必要な手段だった。
囲うには、本人が望む理由が必要だった。



ボロボロに傷ついた心身を癒せるのは俺だけだろ？生まれた時から、おまえには俺しかいないんだから。
あんな、何処の馬の骨かも分からない偽善ぶる仮面だらけの獣医になんて、おまえは守れねえから。



スマホに映る宏光の写真。
この笑顔を守れるのは、俺だけだ。
この笑顔を見てもいいのも、俺だけだ。



＊



スマホをデスクに置いたまま、プレゼン資料の仕上げをしていると…やっと震えたスマホ。
ずっと待ってたそれに胸は高鳴り、スマホを片手に、オフィスを出て、ちょうど誰も居なかったプライベートルームへと入った。



「お疲れ、どうだった？」



開口一番、結末が知りたい。過程じゃなくて、
成功したのか、失敗したのか。
失敗は、許さないけど。



『 それが…申し訳ございません。失敗をしてしまいました』



失敗など、許さない。
そうあらかじめ言っておいたよね？
そのワードが耳に入り、怒りで眩暈が襲う。



「どういう事？会えなかったと捉えればいいのか？」



百歩譲ってそれならば、また次、実行すればいい。
ここで過程が必要になってくる。




『 いえ、会えました。ボコッてる途中、邪魔者が入り…ケーサツを呼んだと言われてしまい、事が大きくなってしまうのは、藤ヶ谷さんが望んでいなかったので、そのまま…』
「逃げたのか？」


最悪だった。

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