囲われたミツと花【前編】

13 F ページ13

「ふぁ…あれ？太輔、まだ居たの？」
「うん。今日有給で休んだから」


宏光があんこを診せに行きたいと告げたいわゆる「三日後」の朝。
サイドボードにある置時計は、短い針が10を指していた。
昨夜も、散々抱き潰した。
宏光を抱かなかった事はない。
宏光の中は、もう俺専用に出来上がってる。
緩くもならない。締め付け、絡みついてくるソコは、ずっと変わらなかった。
俺の支配力を高める要因の一つでもあった。
宏光をこの手で支配したかった。



合鍵が欲しいと強請る宏光の言葉をかわして、3日経っていた。俺があんこを病院に連れて行くと告げると、眉を下げ宏光もかわすだけで納得していないようだった。



そんな事は、許さない。
外に出たいと思わせてしまった自分自身の失態も許せなかったが、もっと許せなかったのはその「玉ちゃん」という獣医だった。



…何が、休診時間に来いだ。
宏光は、自分が対人恐怖症なのに気付いたのかもしれないと受け取ってるが、そんな簡単な事じゃない。



たった数十分で、「玉ちゃん」は気付いたんだ。
宏光の魅力に。そう思う方が自然だった。



ゆっくり、瞼を開けた宏光。
普段なら俺が居るはずのない平日の時間。
俺の腕がまだ後頭部にある事に気付いた様で俺の顔を見ると僅かに瞳が揺れたのを見逃さなかった。



その瞳の奥に垣間見た感情───…
宏光は、鍵が無くても、玉ちゃんの元へと行くつもりだったんだろう。



宏光が起き上がると、同じように起き上がり後ろからその白い背中を抱きしめた。包み込むように俺の褐色の腕を回して。元々、宏光の肌も焼けていた。部活少年だった彼は健康的な肌の色をしていた。
引き締まった身体に、その日焼けした肌が何とも言えないほど綺麗で。
何度も、その背中を見て自分のモノだけにしたいと中学時代、願っていた。



焼けやすい宏光の肌は、今や10年近くも直射日光を浴びていないから白くなっていた。
…いや、正確には、久しぶりに直射日光を浴びた宏光の肌は敏感になっていたのか、紅くなっていた。
焼けやすい体質は変わっていない。




「だから、俺があんこを玉ちゃんのところに診せに行くね」
「…あ、うん。迷惑かけてごめんな、」



分かりやすいほど、肩から力が抜ける宏光。
他の男の事を考えるなんて、絶対許さないから。
これ以上出たいと言うならば、外は怖い所だと…また思い知らさなきゃいけなくなる。



「先に…宏光を気持ち良くしてあげる」



俺の事だけ、考えてろ。

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