囲われたミツと花【前編】

23 F ページ23

「やっと届いたか。」
「設置に行くの、今日でいいのか？」
「ああ。ありがとう、わた」
「しかし、あれだね。部屋の中に監視カメラなんて、太輔そろそろヤバいぞ。親友として心配だわ」
「仕方ないだろ。泥棒に盗まれる訳にはいかねえの。…それにGPS付きのアクセサリー準備できなかったわたが悪いんだからな」
「あのねえ、GPSは受信だけじゃなく送信も必要なの。ある程度の大きさはいるんだってば。あんこちゃんには付けただろ？首輪に」
「…あれな、多分外されたわ。泥棒に」
「え？」
「俺の大切なものを盗む、泥棒にね」



宏光の様子がおかしいと気付いたのは、
部屋の中の至る所にある引き出しの中身が微妙に動いているという事だった。
一箇所だけじゃない、何箇所も。
本人は元に戻してるつもりだろうけど、数ミリ違った。きっと俺じゃなきゃ気付きもしないだろう誤差だ。


合鍵を欲しがっていたから、
合鍵を探してるんだと想像がついた。



試しに、まだ探してないだろう食料庫の奥にある棚の引き出しに、合鍵をしまい
同時に、親友の渉に頼んでいた犬用のGPS機をあんこの首輪に取り付けた。



渉の実家は、警備会社を経営していて、セキュリティ用品も卸していた。
あらかじめ、宏光自身に埋め込むGPSはさすがに無理だ、と拒否られ…挙句の果てに、ネックレスなどにつけれるミクロなGPS機能もないという。
仕方なく犬用のGPSを首輪につけさせておいたけど、数日で、ぱったりと自宅から動かなくなった。



大方、そのGPSが毎日向かっていた場所の主が気づいて、外してくるように言ったのだろう。
世間知らずの宏光が気付く訳がない。



何故今日まで目を瞑っているかというと、まだ確証はないし、「外に出たい」と言われれば、それを止める術がないからだ。



今日、監視カメラがやっと手に入った。
宏光の目を盗んで、これをわたに設置してもらうんだ。



…宏光？



誤魔化せてるとでも思った？
宏光の事なら何でも知ってる俺が......



お前の白い肌が、紅くなり小麦色に染まってきてることを。バルコニーの日光が当たる所で日光浴をしてるだなんて、可愛い嘘。
騙される訳ないだろ？



日焼けした肌は、中学時代の手に入れる事のできなかった宏光を彷彿とさせ、俺を燃え上がらせた。


だから、騙されてるフリをしてるんだよ。
せっかく、ルーフバルコニーには、日焼けしないように殆どタープを張ってあげてるのに。


自ら俺の独占欲を掻き立てる色へと染めていくなんて。

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