囲われたミツと花【前編】

2 F ページ2

「…宏光、」
「ん〜…スルの？仕事は…？」
「仕事の前にシたい」


そう言って、腕の中にいた宏光を抱きしめる。
宏光は、「時間大丈夫なの？」と不安そうにしながらも、俺の首に腕を回し、引き寄せると唇を塞いでくれた。



朝から心地良い。
時間はないから、サイドボードからローションを取り出し、ドロッとそこに垂らす。
ろくに前戯もしてやれなくても、毎日俺を受け入れてくれるソコは、俺の形に馴染んですぐに快感へと導いてくれる。



お願いだから、「外の世界を見たい」だなんて言わないで。
それだけを願い生きていた。


この生活が一番宏光にとって、幸せなんだよ。
攻撃する人もいない。上膳据膳で、欲のまま生きていける。


そんな事、社会通念上有り得ない。
そんな幸せな思いを宏光はしてるんだよ、と洗脳するかのように説き伏せば、宏光は「俺は本当に幸せだよ。たいすけ、ありがとう」と笑ってくれた。



社会には、敵が多いと怖いところだと洗脳する。


宏光は俺に愛されるためだけに、
生きればいい。


誰にも見せたくない。
人をすぐ惹き付け、魅せてしまう宏光を囲う事でしか手元に置いておく方法を見い出せなかった。



＊


「じゃあ、仕事行ってくるね。今日も人が万が一来ても、開けちゃダメだからね」
「ふふ、分かってるよ」
「今日は何するの？」
「疲れたから、寝てようかな」
「うん。それがいい。髪も伸びてきたね、帰ったら切ってあげるから」



可愛い真ん丸の目が隠れそうな宏光の前髪に触れる。髪を切るのも俺がしていた。
知り合いの美容師に基礎だけ習って。
宏光の身の回りの事は、全て俺がしてあげたかった。



「ありがと。確かに本読む時、少し邪魔だと思ってた」



邪魔でも、ピンで止めたり自分で切ったりするなんて選択肢は宏光にはない。
いつも俺が言うまで、待つだけ。
そう自然と躾けたのは俺だ。


君が俺無しでは、生きていけぬように。



絶対に、外の世界になんて出させてたまるもんか。



こんな可愛い子はすぐに攫われてしまう。




玄関で、優しく微笑む宏光の唇を奪う。
この形のいいふにふ○○唇は俺のモノ。
本当は、籍だってなんだって入れて形として囲っておきたいのに。
日本の法律は、まだそれを許していない。
それが悔しかった。



宏光の左の薬指にも、俺の左の薬指にも
同じプラチナの輪が光っているのに。


玩具なんかじゃない。何百万もした、それが。
ずっと互いの指に通っていた。

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