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それでも意を決して、
ノックをし、声が聞こえた後、大きくドアを開け、元気よく中へ入る。
二人の中へと。
二人は、顔馴染みの俺だと気付くと、軽く挨拶をして話を続けた。
二人の世界がそこには出来上がっていて、
自分の入る隙間もない。
届け物を渡した後も二人は、此処に俺がいることが見えていないかのように、盗み聞きした先程の会話を続けながらイチャついていた。
まだ温泉というワードが何度か行き交ってる。
嫉妬なんて、したくなかった。
好きな人の幸せを壊すことなど、望んでいなかった。
でも、耐えられなくなっていたのかもしれない。
「宮もさ、休みとれたら一緒に行こうよ。東の方の温泉」
「えー、俺はガヤと二人きりがいいの!もーホントに鈍感なんだから…」
「たま、…っ!!、こんな所で触んなよっ…」
「本当はもっと触りたいのに、我慢してんじゃん。あ〜!!禁欲生活ツラい──っ」
ガヤさんが俺の存在を思い出したように、気を遣いそう振ってくれたけど、それが酷く傷つける。
まるで自分の存在はお情けだと言われてる様で、存在意義が分からなくなる。
ガヤさんの優しさは時に、苛立ちへと誘う。
玉さんは、俺が温泉に一緒にくっついて行くのが心底嫌みたいに、眉を寄せ唇を尖らせ文句を言いながら、足をパタパタさせ、向のガヤさんの足を蹴っている。
その爪先は見えないけど、きっと…ガヤさんの…
いや、もうそこは考えないようにしよう。
考えたくなくて視線をテーブルに落とし、そんな玉さんの手元の原稿用紙を確認する。
それは、何も手直しされていなかったから、ガヤさんと二人きりになりたくてココにいたんだと分かってしまう。
深く見抜いてしまう事が、癖づいていた。
そして、勝手に落ち込む。
ガヤさんはその玉さんの真意に気付いていない後輩想いの先輩だ。玉さんは本当はめちゃめちゃ仕事できるのに、ガヤさんの前では出来ないフリをする。
なんで、こんな手に取る様に分かるあざとい人を自分は好きなんだろうと、よく自問自答する。
玉さんはガヤさんの前では男らしいけど、俺にとってはそんな彼はヒヨコみたいで可愛く思えてしまう。あざとさ、さえも愛しいのだ。
「俺は当分終日休みないからさ〜!休み、二人は同じ日に取れるといいねぇ〜!じゃあ、またっ」
玉さんの機嫌を損ねないように、無理して笑顔を作った。
カメラの前で、明るい芸能ニュースを読んでいる時のように。
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ももは(プロフ) - くらげさん» くらげさんっ!こんばんは!コメントありがとうございます!わぁー!ご覧頂けてたなんて嬉しくて照れます(^^)Fさん恋の終わりが訪れ、騎士になったかと思いきや…ちょっと無自覚です。本当にただの騎士だと思ってるだけ、なのか♪移行後もご覧頂けると嬉しいです(^^)/ (2019年4月2日 18時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ももはさん、こんばんは!Fさんが痕が早く薄くなればいいと思ってるのを読んで恋の終わりってこうだよね…と切ない気持ちにもなりましたが、そこからのまさかの騎士…!!騎士になられるんですか?!とテンションダダ上がりでした(笑)移行後も楽しみにしています! (2019年4月2日 0時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - makoanjyuさん» makoanjyuさんっ!いつもありがとうございます☆*はい!夜中に更新をしてしまいましたっ!移行後は、ナイトさん、ふらつきます(^^)/思い通りに展開しないKさまイラついてます。もうすぐでアップ出来ると思いますので、引き続きご覧頂けると嬉しいです♪ (2019年4月2日 0時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
makoanjyu(プロフ) - 夜中に目覚めたら更新されてて嬉しいサプライズです♪藤ヶ谷さん、ついに北山姫を助けるべくナイトとして立ち上がりましたねー!もう一度ナイトとして北山さんを助けてるんですけど。オノレの嫉妬心や迷いに気付かされた北山さん。次どーなるの?!wktk♪(´ε` ) (2019年4月1日 2時) (レス) id: f76eafea05 (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - 1632さん» 1632さんっ!いつも本当に本当にありがとうございます(^^)嬉しいです♪ふふふ!姫からナイトにっ!この展開書きたくて書いてました!笑 なので、そう言って頂けて本当に嬉しいです☆長くなり申し訳ありませんが移行後もご覧頂けると嬉しいです♪温かいお言葉感謝です☆* (2019年4月1日 0時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももは | 作成日時:2019年3月20日 0時