恋は何歳まで出来ますか？

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「赤ちゃんがここに…」


自らのお腹に手を置いて、視線を向けた。
藤ヶ谷くんの顔を見るのが怖くて。
俯いたまま。



「もしかして、オレの誕生日ベビー？」


頭の回転早いね、藤ヶ谷くん。
意外にあっさりとした声色に恐る恐る顔を上げると、そこには、涙を溜めた藤ヶ谷くんがいた。



「でかした！北山！すげえ嬉しい！そうならいいのになって思ってた！でも、北山何も言わないから、ダメだったのかと思って…」


…でかした？
その涙の意味することは…
悲しさや不安じゃない？



「両目で見ててあげないとって思ってたのに、気づけなくてごめんな」



喜んでくれてる。
すごく。
優しくお腹を摩ってくれて。
飛び跳ねてる。



「ありがとう！北山っ！」


そして、喜び疲れた藤ヶ谷くんはぎゅっとそっと私を包み込んでくれた。
いや、私をじゃない。私とこの子…


裕太…



「…ありがとう、藤ヶ谷くん」



私もそっと、腕を回した。



＊



私は妊娠の旨を課長に伝えると、課長は一緒に支店長に報告するのを付き合ってくれた。
おかげで、「退職届」を出したはずなのに、私は「産休申請」を出したことになっていた。
課長が配慮してくれたみたい。


こんな三年目に入ったばかりの何の役に立たない私が産休申請を出すなんて恐れ多すぎたけど、課長は「絶対に戻ってきてほしい。これからお金だってもっといるんだし、旦那さんはまだ学生だろ？」と優しく諭してくれたから、絶対戻る覚悟で甘えさせてもらった。



私が、この子と藤ヶ谷くんを養うんだ。
そう思ってた。
藤ヶ谷くんには学校を卒業してほしい。



藤ヶ谷くんの両親は意外と寛容で、お祝いにと、結婚式を挙げさせてもらった。
勿体無いからと断ったけど、藤ヶ谷くんが『オレのお年玉貯金だから大丈夫』と耳打ちしてきた。
どんな大金のお年玉…？とは思ったけど、厚意に甘え、裕太がいるお腹を締め付けないようにウエディングドレスを着て、皆に祝ってもらえた。



盛大な式とは言えないけど、
すごくすごく幸せで皆から覚悟をもらえた気がする。



「…藤ヶ谷くん、」
「もう、北山も藤ヶ谷だよ」
「あっ！じゃあ、私は…」
「北山じゃないね。宏光…」


苗字を重ねた日。
私はたいちゃんと呼ぶようになり、
藤ヶ谷くんは行為中じゃなくても「宏光」と呼ぶようになった。


そして、裕太が産まれる直前まで、週末婚をしていた。母さんといた方が安心だから、と。
藤ヶ谷くんの言葉に少し疑問を抱いたけど従った。

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