恋は何歳まで出来ますか？

. ページ45

「でも、誤解されたままのが裕太くんのためだと思ってた。
歳の差もあって、遠距離にもなる。同性同士で、壁が高すぎたから。裕太くんは他の人を選んぶべき人だと思った」




互いに座ることもせず、
ただ、立ち尽くす。
振り返り、宮田を見ると、目元の一本の皺が少し濃くなっていた。
皺一本でさえ、しっかり覚えてた。



ずっとずっと求めていたフォルム。



「でもさ、オジサンも本気で恋をしてたみたい。
テレビで疲れた顔をしてる裕太くんを見て、ニカに連絡しちゃってさ。裕太くんは元気？って」


「………、」


「そしたら、ニカが提案してくれてさ。今日のことを。『自分で確かめれば？』って」


「………、」


「元気そうで良かった」



…仰いだ手を掴んでほしい。



「…オレは宮田なんかいなくても全然平気だった」



掴まれることのない、この手を掴んでほしい。



「…んー。だよねぇー！」


「…花さんは？」


「何もないよ。裕太くんが見たあの日以来会ってない。
あの日、花さんに言われた言葉は断ったんだ。裕太くんのためじゃない。自分のために」



…花ちゃん、じゃなくて。
花さん、



「裕太くんとの未来へと行く手を阻まれたくなくて。」
「……」
「今度は、俺がもう一度裕太くんに好きになってもらえるように頑張るから。それを伝えに来たんだ」



一度も触れてこない宮田
また一本濃くなった目元の皺
その皺をしっかりと確認するために近づいた。
ただ、それだけ。



「…まあ、頑張って」



嬉しいクセに。強がってしまう。
でも宮田のオレより少し低い位置にある手をとり、手のひらを合わせ、絡ませた。



そして、自分の顔を近づけると宮田が逆に近づけてきて、
緊張から後退りしてしまった。自分から求めたくせに。



「…大好きだよ」



奪われた唇が、離れていく。



「…調子にのんな」



宮田、オレのがさ。
本当はずっとずっとずっとずっとずっとずっと好きだよ。宮田がオレを想う気持ちなんて、本当は小さくて。花さんを想っていた宮田の気持ちを越えてないと思う。



それでも、オレが年月をかけて、越えてみせる。
人の想いを比較するなんて、おかしいって叱られるかもしれない。



それでも、オレは宮田のすべてを手に入れたい。



父さんを手に入れた母さんみたいに。




初めて宮田から貰えた言葉は、何よりもの宝になった。



「ねー、宮田もっかい言って？」
「何を？」
「録音するからっ！」


大好きだ、と。

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す