恋は何歳まで出来ますか？

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宮田から連絡が着たかは分からない。
全て拒否をしていたから。


家に帰ると…
すぐには両親は何も言わなかった。
きっと、目が腫れてることには気づかれたと思う。


寝静まった父さんの目を盗んで、眠れずベッドに横たわっていただけのオレの元に来てくれたのは、母さんだった。


「裕太、眠れない？」
「……ん」


そう言うと、母さんは空いてるベッドの上に腰掛け、膝をトントンとした。



「高校生の頃、裕太がやってくれたみたいに、母さんが膝枕してあげる。目にはこの魔法の手を翳してさ」


母さんが目を真っ赤に腫らしていた翌日。屋上に続く階段でみんなの目を盗んで、ふたり時間を過ごしたことを思い出す。


「あの時の裕太の手の温もりは、今でもちゃんと忘れてないよ〜」
「20年も経ってるのに？」
「もちろん。裕太もきっとさ、20年経っても忘れてないと思う。宮田くんとのこと。」
「……」
「何があったかは分からないけど、過去にするのか、未来に繋ぐかは裕太が決めることだよ。」
「……」
「私と父さんを繋いでくれたのは、裕太なのに冷たいって思うかもしれないけど…これが母さんの愛情。今は分かってくれなくてもいいから」
「…分かってる、母さんは愛で溢れる人だって」



愛で溢れる母さんをずっと見てきた。
母さんは膝枕をして、手を瞼に当ててくれた。


「眠れそう…」


母さん、大好きだよ。
……世界で2番目に。



裕太はそう思いながら、ゆっくり夢の中へと入っていった。



＊



時だけが、過ぎていた。
仕事をこなし、学校生活をこなし、友達とふざけあったり、父さんと母さんを奪い合う日常に戻っていた。


時が流れれば、忘れると思っていた。
宮田を見送った玄関に帰る度に思い出す。
毎日、何時に帰ってくるだろうと胸を踊らせていた事、帰ったら、宮田はいるだろうかと手を震わせながら、ドアを開けた事。


全部思い出す。
フォルムはあるのに、実際にそこには宮田の靴は並んでいないから、残像だと知る。


こんなことなら、誕生日プレゼント、思い出なんかじゃなくて、何か高価なモノでも貰っておけば良かった。宮田を思い出せるように。宮田との過去が嘘じゃなかったと証明するために。


今、宮田との過去を証明するものはオレの記憶の中でしかない。
誓い合った指輪も。
祝ってもらった色紙も
祝福されてる結婚式の映像も。
旅行に行った写真だって。
ない。やってもいないし、行ってもいないから。



宮田との全てはホントに何も無い。

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