恋は何歳まで出来ますか？

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良かったじゃん。



"ふーん。じゃあ元奥さんがよりを戻したいって言ってきても断るんだ？"

"んー。それは断らないかな"

"…なんで？"

"花ちゃんは特別だから"


戻りたい、って言われたなら。それは…。



「…良かったじゃん。」
『裕太くん…？』
「…望みが叶って。」
『望みって、俺が今、付き合ってるのは裕太くんだよ？』
「なにそれ、花さんのところに戻りたいくせに、オレに申し訳ないから、迷ってんの？」
『……そんなこと、ないよ』


なら何で、間があった？



「いーよ。もう、飽きた。
別にオレは宮田なんか好きじゃないし。どうせ遠距離無理だし。別にモテるし。選り取りみどりだし。わざわざ遠距離のおじさんなんて要らないし」
『……、そうだよ、ね。』
「そうだよ。だから、別れよう。短い間だったけど、楽しかった。ばいばい」
『ゆうたく』



その先を聞きたくなくて、無理矢理別れを告げ通話を切った。宮田は切れたスマホを数秒見つめると、アナウンスに気づき、慌てて改札の中へと入っていった。


宮田が乗る新幹線の到着を知らせるもの。
同じ相手となら、女性だってすぐに再婚できる。
おおかた、宮田の大切さに花さんが気付いたんだろう。
どうせ、オレがその20年に勝つことはできない。



普通に改札に入っていく宮田が悔しかった。
最終電車でもないのに。
オレのために例え1本だって見逃してはくれないんだと思うと、また苦しくなった。


最初から最後まで、ずっとオレだけが宮田を好きだった。オレだけが宮田を想っていた。
オレだけが、宮田のことで胸が苦しかった。



声にならない嗚咽を殺し、その場にしゃがみこむ。



行き交う人は、不思議そうに見てくるのに、誰も助けてはくれない。



"裕太くんの朝ごはんを食べると、一日頑張れるし、裕太くんに夜逢えると思うと帰りが楽しみになる。
仕事早く終わらないかなーって思ったのは、久しぶりかも"



『久しぶり』その言葉が嫌だった。
オレにとっては、全て初めてなのに。
宮田にとっては、全て初めてじゃないということを突きつけられたようだったから。



宮田にとっての全ては花さんなんだ。
初めて手を繋いだのも、初めてキスしたのも。
初めて、幸せにしたいと思ったのも。


オレじゃない。


オレは初めて、ちゃんと好きだって思えたのに。


母さんみたいには、頑張れない。
傷つくのは、やっぱり怖い。



母さんみたいに相手が他の人と幸せになる背中を押したんじゃない。逃げたんだ。

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