恋は何歳まで出来ますか？

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「…宮田、」


母さんは、基本オレが帰宅していない場合は、こうやって電気をつけておいてくれてる。
灯りがついていない部屋に戻るのは、寂しいでしょう、と言って。


だから、灯りがついていても、そこには誰もいないと思ってた。
でも、宮田がポツンと座っていた。


思わず、ドアノブを掴んだまま固まってしまう。
疲労感も吹き飛ぶほどに、身体に緊張が走る。



「おかえり、裕太くん」



オレを待っていてくれたんだろうか、と。
自惚れてしまうじゃないか。
真っ直ぐ見据えてくる宮田に何も言葉を返せない。
名前しか呼んでいない。



「昨夜のこと謝りたくて」


別に。ドタキャンなんて、メンバーにだってされるし、大したことではない。
ドタキャンする理由があるからだ。
その約束より大切な理由が。



「別に」


その先に続く言葉は喉に突っかかり出てきてくれない。



「…本当にごめんね、急に仕事が入っちゃって」



『仕事』当たり障りのない理由。
電話口には花さんがいたくせに。
宮田はオレにバレていないと思ってるんだろう。



「大変だね。エリートサラリーマンは。」



嫌味のひとつでもかましたくなり、発した言葉は厭にトゲトゲしいと自分でも分かる。



昨夜のキスのことなんて、宮田は覚えてないのかな。どうでもいいのか。何度だって何人とだって、宮田は大人だから沢山キスをしているんだろう。
あんな唇が触れただけの、行為…



小鳥に啄かれたとしか思わないんだろう。
オレ、ふじピヨって言われてるぐらいだし。



「今度、埋め合わせさせて？」
「…次、約束破ったら...裸で逆立ちだからな」



早く次がほしい。次は絶対、守ってほしい。
次、果たされなかったら…本当に壊れそう。



「わかってる。本当にごめん。」



余りにも謝ることしかしない、宮田がむかつく。
キスをしたこと、本当に気にしてないの？



「…昨日さ、部屋に来なかった？」



何も言ってくれないなら、こっちから言うしかなくなるじゃん。
宮田の目が見れなくて、そのままその言葉を投げかけながら、ソファーへと座る。
背中に宮田の視線を感じながらも、心臓はバクバクだ。


"行ったよー！寝惚けて裕太くんキスしたでしょ"


そう言ってきたら、伝えよう。


"寝惚けてないよ"


って。


だから、早く言って。
もう伝えてしまわないと、苦しくて仕事にならない。


なのに




「ん？行ってないよ」




平然と宮田はそう言って、"おやすみ"とリビングを出ていった。

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