恋は何歳まで出来ますか？

. ページ20

宏光のスマホに届いた内容は


『今、トシくんといる。宏光ごめんね。トシくん、宏光のところにお世話になってるんだね。今彼氏と上手くいってなくて…話を聞いてくれるトシくんって本当に優しくて、今更後悔してる。ひろ、本当にごめん』


その届いたメッセージは勿論返せていない。
花のことは大好きだけど、そんなにすぐ返せるものではなかったし、許せる問題ではなかった。
自分は宮田くんの友達でもあるから。



例え、宮田くんが花に寂しい思いをさせていたとしても、それはルール違反だよ、花。
自分から別れようと裏切ったくせに、宮田くんの優しさや気持ちに付け入るなんて。



「…今日、裕太との約束だったんじゃないの？」


「…あ、え、お、うん。そうだったんだけど…」


「花が泣きついたから、花のところへいったの？」



宮田は、光ってるディスプレイを見て、
花が何を連絡したかを悟った。
自分が裕太との約束を破り元妻に会いにいっていたことが宏光にバレていると。



息子を溺愛する宏光が怒ってる理由を察した宮田は頭を下げた。すごい勢いで。



「ごめん！裕太くんとの約束破って…、花ちゃんが心配で…」



知ってるよ、宮田くんが花のことをずっと思ってるのは。花と宮田くんは私と藤ヶ谷くんより長い。
中学の時からだから。
四半世紀以上も一緒にいる人のことをそんなに簡単に嫌いになれることも忘れることも放っておくこともできないことを。



宮田くんはそういう人だ。
私の知ってる宮田くんは思慮深いタイプ。



「宮田くんが花のことを大切にしてることは分かってる。でもね、裕太を蔑ろにしないで。」



「…ごめん、そうだよね、裕太くんだって忙しいのに、せっかく空けてくれてたんだもんね」



「そうだよ。忙しいのに、急な約束を守った裕太の気持ちをちゃんと汲んであげて」



恩着せがましい言い方だとは分かってるけど、
これ以上自分が裕太の気持ちを露呈する訳にはいかなかった。



「裕太の部屋、覗いてあげて。あの子閉じ篭ってるけど、ずっと宮田くんの帰りを待っていたから。私には分かる。母親だから」



「ありがと、みつちゃん。そうだね、謝ってくる」



「…ねえ、花とは、その…何もなかったの？」



「ははっ、ないよ。他の人を思ってヤケ酒のんでる元奥さんには手を出せないでしょ？」



それが、宮田くんの優しいけど、残酷なところだ。



「今日のこと裕太には言わないで」



花と会っていたなんて、教えたくない。

.→←残酷だよ、その言葉は

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す