未来を変えろ！【後編】

恋のネタ帳 ページ32

北山と二度目のデートはお茶と映画だった。
一緒にランチか夜ごはんを誘ったら、「一緒に向き合って食べるのは、まだハードルが高い」らしい。


お茶だって、真正面に向き合う感じじゃなくて、お互いが斜めになり、ガラス越しに見下ろせるのは行き交う人達。そんな人達を見たり街の光景を楽しめる席だった。商業施設ビルの7階に位置している北山ご指名のお店。
何だかんだ8割程の席が、向かい合ってることはなくこの少し変わった席のレイアウトが目立つ店だった。
さすがに向かい合ってる2割に当たることはなく、
今北山は少し斜め隣にいる。


彼女の視線はもっぱらオレじゃなくて、街並みだった。



そして、お手洗いに…と出ていったのは3回目。まだ30分しか経っていないのに…
テナントの外にあるため、この店から出てビルのトイレまで向かう北山は往復約5分ちょっと席を外してる。
それが今回で3回目だから、ろくに会話も続かない。



(オレと話してても楽しくないのかな…)



不安になる。ただの時間潰しの時間なのかと思う。
それを象徴した様にまだ半分以上入ってるカフェラテは氷で薄まっていた。



北山に合わせて、飲むのを心がけてるから…
オレの手元のミルクティーも同じほどの量だった。
薄くて分離した上の方は水っぽくなっている。



確かに映画まで時間があと1時間ほどあるから
ここを出てもいく宛もない。
限られた小遣いの中で、デートするのはなんて気苦労が必要なんだろう。
早く大人になりたい。



デートのことをこんなにも考えたのは初めてだった。ボキャブラリーの少なさに嫌気がさした。家とかカラオケとかそんなんしか出てこない。あとは商業施設。



つまらなかったかな…
搾り出した案は、無難に映画になってしまった。
もっとコーディネートしたいと思っていたのに、半日部活で潰れるから、あまり遠くも行けなかった。



そんな不安を抱き出した時、ふと半分開いてた北山のバックから小さなノートが顔を出していた。


表紙には「ネタ帳」と書いてあった。
北山の綺麗な字で。なんなら、筆ペンで。



ネタ帳…
北山はお笑い芸人になりたいのか
ルミ〇に誘った方が良かったかな。
でも高校生には高いんだよ…観覧料。
芸人さんも頑張ってるから当たり前の対価なんだけど。



(ごめん！北山！)



人のモノは盗み見するなとか、人の机の引き出しは開けるなとか両親に教えられていた。



でも好きな人のことは別だ。知りたい。
もっと好きになってほしいから。

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