未来を変えろ！【後編】

初デートはWデート ページ27

宏光と結ばれたあの日から一ヶ月──…


藤ヶ谷は悩んでいた。


「…え？まだデートしてないの？北山さんと」
「部活とかあって…誘うタイミングを失ったというか…」
「ガヤ別に、付き合うの初めてじゃないじゃん。なんなら、入学早々誰かと付き合ってたことない？」
「え、そうだっけ？」
「自分のことぐらい覚えててよ。それに誘うタイミングなんてめちゃめちゃあるじゃん！LINEとか」
「…そうなんだけど…」



そして、宏光も悩んでいた。


「え、まだデートしてないの？藤ヶ谷くんと」
「うん。藤ヶ谷くん部活で忙しいし、いつ誘っていいか分からなくて…その…」
「…ミツって、付き合ったりしたの初めてなの？」
「うん。だって、初恋だから」
「え、そうなの？初恋叶うなんて良かったね！」
「…ありがとう。本当に夢みたいで、いつか覚めるんじゃないかと毎日ヒヤヒヤしてる」
「あははっ！なにそれ〜大丈夫だよ！でもさ〜男子から誘うべきだよねー。デートはさ！ミツは何も悪くないよ」
「…そうかなぁ。でも、藤ヶ谷くんより私の方が好きな訳だから、私が誘うのが筋じゃない？」
「…なんの筋よ、それ」



藤ヶ谷は部活始まりのロッカールームにて、二階堂と二人きりになったのを見計らい相談をしていた。


そして、宏光は健美と一緒にカフェに来ていた。今日はテラス席じゃない。室内で。
宏光は、テラス席を見つめながら…裕太のことを思い出していた。


藤ヶ谷くんと何かすれ違ったり、喧嘩したりして別れても裕太は生まれない…
そんは不安が宏光の心に付き纏っていた。


まるで…それでは裕太のために、藤ヶ谷と付き合ってるみたいだ。
何となく、感じていた想いには気付かぬふりをしていた。
目を瞑っていた。


藤ヶ谷くんに嫌われたくない。
怒らせたくない。
付き合ってみたら、面倒なやつだったと思われたくない。
付き合ってみたら、面白くないやつだったと思われたくない。


実際、自分は藤ヶ谷との未来を変えたけれど、自分はしつこいほどの「好きだ」ということしか、伝えていない。それに絆されて藤ヶ谷くんは付き合ってくれた…好きだと言ってくれたけど、それは一時的なものかもしれない。


自分のつまらなさに飽きて、藤ヶ谷くんとの未来は元に戻ってしまうかもしれない。
ただのクラスメイトという未来に。


そう思うと…中々デートに誘えなかった。


片想いの方が辛くて、両想いは幸せでいっぱいという定義が自分の中で揺らいでいった。

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