【あんスタ】大きなサーカスの玉乗りピエロ (ページ5)

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51話　黒い羽の悪巧み3 ページ5

凛月side

紗弥は倒れた千秋に近づいて、デコピンの形にした手を口元に近づけ、はーっと息を吹きかけた。

そして、守沢先輩の額に向かって軽くデコピンをした。

紗弥は黙ったままテーブルとイスを戻し、遮光カーテンを開けて窓を開けると、扉の方に向かい、扉を開けた。

！！…くっさ。
甘いものとか甘い匂いは好きだけど、この匂いはないわ…。

「！！…凛月くん。」
「…あ、サヤじゃん～。今音楽室使ってる？ちょっと寝たいんだけど」

最初からずっと見てたとか言いたくないから、適当に嘘ついて誤魔化す。

「それがっ、私も音楽室を使いたくて来たけど、中に入ったら、千秋先輩が…」

紗弥は俺に見せびらかす様にして、身を引いた。

「ありゃー。でも俺は保健室に運ぶの、手伝わないよ？第一発見者がお願いね」
「……大丈夫です。先生を呼んでくるから」

「えー。寝れないなぁ…」

紗弥がぎろっと俺の眼を見て、佐賀美先生を呼びに言った。

右左を見て誰もいないことを確認する。
少しだけ早足で中に入り、倒れている千秋に近づく。

「…ご愁傷さまでーす…多分、先輩も騙されたんでしょうね？…」

そこで倒れている先輩の頬はバラ色に染まり、倒れているが酷く熱を持っている。

俺は遮光カーテンを再び閉めて、楽器と楽器の間に倒れた。

その後、先輩は保健室のベッドで横になったそうだけど、
運ばれている間もその後も起きず、ちょっぴり苦しそうな顔をしたまま、寝ていたとのこと。

そして、佐賀美先生が保健室を出ているうちに何処かへいなくなったって。
おまけに沙弥も、授業に現れなかったから、先生が説教しようとしたら、ふらっと廊下に倒れてたって話で。

「…あいつ、なんかしたのかな…」

その話を盗み聞きした頃、凛月はいつもの大きな木の影の下で横になっていた。

凛月が何としても気掛かりだったのは、沙弥が最後に指に息を吹きかけて、千秋にデコピンをしたこと。

何が原因で、サヤ(あいつ)は倒れた？
守沢センパイが倒れたのは、あの異様な甘い匂いだとは思うけど。

もしかして…

前に俺がAの能力を知ったとき、Aは言ってた。

“能力を使いすぎるとふらっと倒れちゃうんだよね”って。

サヤ……あいつもAと同じような能力を持ってるってこと？

いや、その可能性は低いはず。だって、能力を持つ人は30億人に１人だもん。
……Aはそれだけ珍しいってこと。