一瞬の永遠を、きみと (ページ19)

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嫌ならやめればいい。

それだけだ。

でも、どうしても、手を振り払うことはできない。

『だいたい自転車で行くって、どれだけ時間かかると思ってるの？今日一日じゃ無理だよ。ぶっ通しで漕ぎ続けられるわけでもないんだし』

俯いた目線の先には、つないだわたしと大我の手が見える。

真夏の空気のように熱いわたしの手と、真冬の雪のように冷たい大我の手。

全然違う温度だから、そこにあるのがよくわかる。

「時間がかかるか。だから無理だって言うのか？」

『そうだよ。遠いんだもん、大変だよ』

「でもそれって時間がかかるってだけなんだろ。時間をかければ行けるんだろ。大変だけど」

『まあそうだね。大変だけど』

「だったらいつかは辿り着くんだろ」

　
伏せていた顔をのそりと上げると、大我が少しだけ目を細めてわたしを見ていた。

表情は元に戻っている。

冬の澄んだ青空のように、透明で晴れやかな笑顔だ。

「一緒に来てくれ、A」

相変わらず汗ひとつかいていない大我の額で、少し長めの前髪が、どこからか吹く隙間風に揺れている。

「おれは、おまえがいないとだめなんだ」

これも本気みたいだった。

ついさっき出会ったばかりのわたしに、まるで長年連れ添った夫婦の別れ際みたいな台詞を言うのだ。

わたしのことなんて何も知らないくせに、何をそんなに信用しているんだか。