一瞬の永遠を、きみと (ページ15)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:9,846 hit

＊ページ15

まさか海に行くなんて言い出しておいてお金を持っていないなんて。

そもそも、お金を持っていないくせに海に行くなんて言い出したのか。

『本当にないの？ちょっとくらいあるでしょ。別にホテル泊まろうなんて言ってるわけじゃないんだから、電車代くらいあるんじゃないの』

「だからないんだって」

『一円も？』

「一円も」

『そんな人っている？』

「今おまえの目の前に」

大我は短く答えて笑うと、少し考えるように黙ったあと、前を向いたまま呟いた。

「なあ、お金がなきゃ海には行けないのかな」

行く術がないのに、それでも足を止めない大我に、呆れることすらできなかった。

本気で言っているのか、それともやっぱり馬鹿にされているのだろうか。

『あたりまえでしょ。お金がなかったらバスも電車もタクシーも乗れないんだよ。それなのにどうやって海に行くって言うの。無謀にもほどがあるって』

ここから海に行くには、なんでもいいから交通機関を使う必要がある。

それにはお金がなければ乗ることはできないなんて小学生どころかもっと小さな子どもだって知っていることだ。

「……」

大我がまた、考え込むように口をつぐんだ。

その後ろで大我に聞こえないように小さくため息を吐く。

……この人は一体何を考えているんだろう。

何かしらを考えてはいるようだけど、まともなことだとは到底思えない。

それともわたしがからかわれているだけなのだろうか。

いやむしろそうだと言ってほしい。

でなければそろそろついていくという決心が揺らいでしまいそうになるから。