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いや、確かに悔いは無いと言った。しかしそれは言葉の綾というかオタクの性というか…まじでここで人生が終わることは肯定していないのよ。
今まで私は罠にかかったことはない。これはひとつの自慢であった。もう過去の栄光となってしまったのだが。
最近は罠が多すぎて避けるのに苦労していたが、今日はなんか意識がはっきりしない上、朝から霧がかかっていてよく見えなかったのが敗因である、と思う。
「やーっとかかってくれましたね」
「ひぃっ」
「そんなに怯えないでくださいよぉ。取って食ったりなんてしませんから」
何故君がここにいるのかな。
綾部喜八郎くん。
というか、
「やっと…?」
「そう。先輩ったら、全然落ちてくれないんですもん」
「えっ」
そういえば最近妙に視線を感じていたような…あれ、自意識過剰じゃなかったんだ。よかった…いや良くは無いけれども。
というか、全然って何?落ちないことはいい事じゃん。
「先輩、名前は?」
「…人に名前を聞く時は、まず自分が名乗るべき、だと思いますけど」
「それもそうですね。僕は4年い組の綾部喜八郎です」
「それはそれはご丁寧にどうも…」
「先輩こそ、名乗られたら名乗り返すのが礼儀では?」
「うっ、ごもっとも…6年のAA…です」
「へぇ」
名乗る予定無かったのに…逃げたかったのに…穴の上から覗かれたら無理じゃん!
というかへぇって何かな、へぇって。興味が無いなら聞かないでよ。
「初めて聞きましたよ」
「…まぁ、初めて会いましたからね」
「可笑しくないですか、それ」
「何がでしょうかね」
「4年も居て、一切顔を会わせないことなんてありますかね」
「…実際あるじゃないですか」
「うーん、まぁそうなんですけどねぇ」
「…それでは」
「あっ」
綾部くんが考えている隙を見て穴を抜け出す。
幸い高さはそれほどなく、自力で抜け出すことが出来た。
それにしても、今日は朝から不運だなぁ…
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ねこまる - めっちゃくちゃ面白かったです!更新楽しみにしてます! (2023年4月12日 21時) (レス) @page42 id: 580960554b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白桃 | 作成日時:2023年3月5日 8時