月光下のワルツ◆撻螢奪僉次 ページ5
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「リッパーさんっ…!?」
視界が急に高くなり、彼の顔を見下ろす形になる
「…あなたは、私にとって宝物ですよ。」
リッパーはそのまま私の腰に手を回し、正面から抱きかかえた
「私は意外と性急のようです。このまま貴方を離せば、鐘の音と一緒にどこかへ消えてしまいそうなので。」
「…ふふ、何ですかそれ」
性に合ってはいるが、あまりにもキザなセリフだったので思わず笑みがこぼれる
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「月の光に照らされたあなたは、本当に綺麗だ。」
リッパーは私の髪を片手ですき、頰へと手を滑らせる
「…少し、目を閉じてくれないでしょうか。」
「…は、い……」
彼は口づけをする時、必ず目を閉じるように要求する
仮面が擦れる音の後に、少し冷たくて薄い唇が私の唇へと重なる
触れるだけのキスに、もどかしさを感じた
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・
「…ねぇ、どうして目を開けてはいけないの?」
「仮面の下を見せるには、まだ、私の覚悟が足りないんです。…すみません。」
何回か繰り返したこの会話
私は、いてもたってもいられず勢いに任せ言葉を放った
今日なら、…この場所なら彼の不安を少しでも取り除けるきっかけになるかもしれない
・
「目はつぶったままにしますから、…その、
私からキスしても、いいですか…?」
・
しばらく沈黙が続き、私の心臓は不安と恥ずかしさで悲鳴をあげていた
「ステキなお誘いですね。…いいですよ。」
私は緊張で震えた指で彼の顔のラインをなぞり、そのままゆっくりと唇を押し当てた
「っ………。…私、ちゃんとできてますか…?」
角度を変えたりだとか、そんな技術はあいにく持ち合わせていない
何度も何度も、唇を単調に重ねていく
次第に、私を支える腕の拘束が強まっていく
「いじらしいあなたに出会えるとは。」
リッパーは小さくため息を吐き、私をそっと地面に組み敷いた
草が私の顔をいたずらにくすぶる
「リッパーさん…?」
「まだ、目は開けてはダメですよ?」
そう言って彼は、私の唇を盗むようにキスした
先程とは打って変わった深い口づけに、思わず声が漏れる
「あっ…ん、リッパーさ、ん…っ…」
私の火照った身体に夜風がまとわりつく
見えない背徳感からか、私の呼吸は荒くなる
「私を案じて必死にしてくれること…全てがいじらしくて、愛おしいんです。
…もっとあなたを大事にさせて欲しいのに。」
見えないがまぶたの向こうから感じる熱を帯びた眼差しに、私は囚われてしまった
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虫眼鏡(プロフ) - ぽむちゃんさん» ありがとうございます、リッパーとジョゼフと一緒にアフタヌーンティーをする話がみたいです…! (2019年8月11日 19時) (レス) id: fbf6ffc701 (このIDを非表示/違反報告)
setuna7014(プロフ) - えっと、ケンカップルとか、溺愛とか読みたいです… (2019年8月8日 18時) (レス) id: 9c6758aed7 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむちゃん(プロフ) - setuna7014さん» コメントありがとうございます!ナワーブ君かしこまりました!もし読みたいシチュエーションございましたら、またコメントの方へ教えてくださると嬉しいです!特になければそれでも大丈夫です('ω') (2019年8月8日 15時) (レス) id: 220fc1050f (このIDを非表示/違反報告)
ゆにゃ(プロフ) - ぽむちゃんさん» ぽむちゃん様、リクエストの期待通りな物を作って頂き有難うございます…!!すっごくすっごくキュンとさせられました(*´ω`*)有難うございました! (2019年8月8日 15時) (レス) id: f90955ba8c (このIDを非表示/違反報告)
ぽむちゃん(プロフ) - 虫眼鏡さん» コメントありがとうございます!ぜひぜひ、リクエストしていってください!! (2019年8月8日 15時) (レス) id: 220fc1050f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽむちゃん | 作成日時:2019年8月2日 18時