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「では、またあとで」
地面を蹴って段をいくつかすっ飛ばし二階に駆け上がる。速、という言葉を耳が拾った。俺もそれなりに速い部類に入るのか。成長したなあ。
伊黒様や蜜璃様のお陰である。
「……!」
この部屋からむせかえるような匂いがする。鉄の匂い、すなわち大量の血の匂い。これが一人の血だとしたら、恐らくもう死んでいるだろう。
襖を少しだけ開けて覗く。間違いない、あの異形の姿は鬼だ。貪り食っていて俺にはまだ気づいていない。音を出さないように襖を開ける。好都合だ、血鬼術も使えさせぬまま殺す。
「蛇の呼吸、壱ノ型──委蛇斬り」
一閃。鬼の首が飛んだ。もう一匹くらいはいるはずだ、この鬼はたぶん雑魚なので餌を得るために他の雑魚と一時的に共謀してる可能性が高い。刀をしまわず周囲を警戒する。
と、その時鎹烏が叫んだ。
「村田、一階ニテ鬼二匹ト遭遇〜! 戦闘ニナルノモ時間ノ問題ナリィィ!!」
「嘘だろ!? 案内してくれ!!」
予想が外れた。つまるところ、さっきのがそこそこ強い鬼だったのだ。もしかすると血鬼術が強力だったのかもしれない。速攻したのは正解だったし、担当するのも俺でよかったが。
一人にするべきではなかった。伊黒様もこんな気持ちだったのだろうか。
大慌てで走る。俺が村田さんの元にたどり着いたときは、まさに村田さんに長い爪が刺さろうとしていたその手前。鬼にいくらか傷がついていたため、村田さんは結構頑張ったようだ。
踏み込み。そして、鬼の方へ跳ぶ。まずは二匹を蹴りで引き離した。
「村田!! 三本角の鬼の首を跳ねろ!!」
「了解です!!」
敬語が抜けたが緊急なので許してほしい。いやらしい目で物色するように鬼が俺を見る。美味いか不味いかを見極めているのか、胸糞が悪い。
浅く息を吐き、構え──
「もう二度と鬼として起きるな」
首を落とした。振り返って村田さんを見ると、やや苦戦しつつもなんとか首を落とせたようだ。そして、村田さんのすぐ近くには幼い子供。……もしかして爪から庇おうと? なるほど。
「村田さん、お疲れ様です」
「いえ……ありがとうございました」
「怪我の治療を。俺は生存者を探してきます」
なんだ、最近の隊士も根性あるじゃないか。
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紅葉蓮(プロフ) - ゆうさん» ありがとうございます!!あと少しで一旦完結の予定ですので、頑張ります! (2020年6月14日 19時) (レス) id: e2cb5510b9 (このIDを非表示/違反報告)
二嘉 - いいなコレ。気にいったぜ☆ (2020年6月3日 18時) (レス) id: 5a89568ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです!続き読みたいです! (2020年4月27日 21時) (レス) id: 7f11035070 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ - うむ。面白い!よもやよもや! (2020年3月4日 8時) (レス) id: 4b674ab2ae (このIDを非表示/違反報告)
紅葉蓮(プロフ) - 紫呉さん» いやほんとそれですよね…! (2020年2月25日 10時) (レス) id: e2cb5510b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉蓮 | 作成日時:2019年11月25日 11時