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「……はっ、」


突然横から弾丸のような物が飛んできた。咄嗟に避け距離をとる。木と木の間から体躯のでかい鬼が出てくる。弾丸のようなもの、はこいつの爪らしきもの。しかし今は再生している。

まずい。こいつ、別格だ。

雷が遠くで鳴っている。日も防ぐ葉で覆われているから、雨はほとんど落ちてこない。それでも雨音が思考を掻き乱す。考えなくてはならない。こいつの弾丸のような爪を避け、長い腕に掴まれないようにしながら間合いを詰める方法を。

逃げる選択肢など存在しない。相討ちになってでも殺してやる。目に文字が見えないから、固さはそこまでないだろう。首に刃を添えさえすれば、俺の勝ちだ。

弾丸のような爪を弾き、手首を切り落とす。切り落としてない腕を振り回されぶん殴られそうになったのをすんでのところでかわす。あっぶない、木がぼきりと折れた。当たったらひとたまりもない。

大丈夫、落ち着け。伊黒様の方が断然強い。俺なら倒せる。

しばらく攻防を続けていると爪が襲いかかってくる。弾いたが、それのすぐあとに第二の爪があったらしく頬を掠める。っ、まずい、手に力が入りにくい。毒だ。

目の前の鬼が余裕綽々といった様子で笑う。もうこいつは俺を倒した気になっているらしい。確かに力が入らないから実力は劣っただろう。

けれど。

殺し合いは実力と運の隙間にある。


「生憎だな。俺は運がいいんだ。貴様は必ず、今夜死ぬ」


粋がってはみたが、もう体がうまく動かない。全身がしびれるようだ。即効性の毒らしい。戦う最中だから呼吸を緩めることもできない。足から力が抜け立つのもままならないのだ、無理だろう。

鬼が煽りを不快に思ったのだろう。手を振り上げ、そして──


「何を座り込んでいる、加賀見」


腕と首が同時に落とされた。暗闇に、美しい蛇のような人が立つ。汚れひとつなく、さすがだ、と思った。


「毒を……申し訳ありません……」
「毒が回らない呼吸をしろ。もうしゃべるな」


背中に手を置かれる。やっぱりこの人、かっこいいなあ。とかく強く、優しい。

はあ……。蜜璃様と幸せになってほしいな(ぶれない)。

六月末→←〃



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紅葉蓮(プロフ) - ゆうさん» ありがとうございます!!あと少しで一旦完結の予定ですので、頑張ります! (2020年6月14日 19時) (レス) id: e2cb5510b9 (このIDを非表示/違反報告)
二嘉 - いいなコレ。気にいったぜ☆ (2020年6月3日 18時) (レス) id: 5a89568ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです!続き読みたいです! (2020年4月27日 21時) (レス) id: 7f11035070 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダ - うむ。面白い!よもやよもや! (2020年3月4日 8時) (レス) id: 4b674ab2ae (このIDを非表示/違反報告)
紅葉蓮(プロフ) - 紫呉さん» いやほんとそれですよね…! (2020年2月25日 10時) (レス) id: e2cb5510b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅葉蓮 | 作成日時:2019年11月25日 11時

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