41、M ページ42
あの後自分の部屋に戻ったAはベッドの上に寝転がって疲れを癒していた。
貴女「あーいらんエネルギー使った気がする」
脱力しながら独り言を大きく言った。
今までは灰崎の相手をするだけでかなりの体力を使っていたのに、これからはヒロトまでいる。今後の自分のメンタルが心配になる。
ただ、あの二人と一緒にいる間は怖いことなんてすっかり忘れていた。
それどころか、いつものことなので謎の安心感さえあった。
あんな酷いこと言われといて安心ってどういうことだろう。Mか？私はMにでもなってしまったのか？
貴女「…そうかもしれないなあー。全く迷惑な話だよ」
Aはクスリと一人で笑みをこぼした。
でも賑やかだった先程とは一変し、今は一人で静かな空間にいる。
…何だか一人だと不安が押し寄せて来そうだ。
あの大会に何か恐ろしいものが潜んでいるのではないかと。
その時、ドアをコンコンと丁寧にノックする音が部屋に響いた。
貴女「ふぉ？」
ベッドから降り、ガチャリとドアを開けた。
貴女「はーいどちらさ…ま…」
一星「どうも」
貴女「おお一星くんか。どうしたの？」
一星「いえ、大したことではないんです。その…先輩と話したくなっちゃって」
一星が照れたように笑った。
その姿がAの中にある母性本能をくすぐった。
貴女「そうかそうか！もちろんいいよ。立ち話も何だし、入ったら？」
一星「え、いいんですか⁉」
そう言った途端一星はパアッと明るくなった。
貴女「いいよ。さ、どうぞ」
Aにはこの時、一星が黒い笑みを浮かべていたことなど分からなかった。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年5月27日 23時
