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少しの間、力を溜めた。

自分ははただの動物に過ぎないと思っていたが、こうすると自分の運動能力が幾分か上がることに最近気づいた。

まだ未熟だが、今日はコイツの能力のおかげで格段に強くなった気がする。


「ガルル...グァ!!!」

オレは低い雄叫びを上げて目の前の鉄格子に向かって突進した。

ガシャーーーン!

頭部に鈍痛が広がるが、思ったより檻は簡単に吹っ飛んだ。

『檻を破られた!?』

そういえばさっきから外野でやいのやいの聞こえていたが、オレは背に乗せたヤツに夢中でどうでもよくなっていた。


『逃がすなー!』

『麻酔銃を撃て!!』


打ってみろ、跳ね返してやる!!


オレは武器を持ったヒトを薙ぎ倒しながら出口と思われる扉に体当たりした。

バゴッッッ!



鈍い音を立てて扉は外れた。

たくさんの人がいる。別の部屋に通づる扉だったようだ。

『なっなんだ!?ぐぁあ!!』

『至急!応援求...ぎゃああ!』

オレの行く手を阻むものは殺す!!


ガシャーーン!!

『誰か止めろ!!!』


いや、そんなことよりも早く出口を見つけなければ...!



「離れろ!!」

一際大きな声が聞こえた。

そこにはオレがこの世で最も憎いと思っている男、この組織を牛耳る男が立っていた。

オレの中で何かの糸が切れたようにオレはそいつに向かって突進した。

もう少しで届く.....この鋭い爪で八つ裂きにできる....

あとほんの少し....




その瞬間視界が真っ暗になり、意識が朦朧とし始めた。

クソッ、まただ...

いつもこうしてオレの復讐は叶わない。



背中にあの“ヒト”の体温を確かに感じながら、

オレは意識を手放した。






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作者名:momiji | 作成日時:2021年10月14日 1時

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