俺らまだ原石 garnet 【1】 (ページ50)

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Side Taiga

「…そうだね。北斗には隠せないみたい。兄ちゃん、苦しかった。高校でね、酸素がないみたい。楽しくもないし。息を吸うってこんなに難しかったっけって。」

真っ暗な病室で北斗を抱きしめながら、
気持ちを暴露した。

顔は見えてないから、
俺が泣いていても大丈夫だ。

「…おれも、そうだったよ。学校にいるとね、酸素がないみたいで、もう何も考えられない。階段から落ちたとき、もう死んじゃえって思った。」

おれもそうだった。
兄弟揃って同じことを考えるなんて。

最悪なことだけど。

「でも、でもね。目を覚ましたとき、大我が良かったって言ってくれて、嬉しかった。毎日いじめられてること言えなくて辛かったけど、もう大丈夫って言ってくれて安心したの…だから俺も大我のそばにいるって。」

「…にいさ、もうあの高校行きたくないでしょ？」

ぎゅっと服を握られる。
少し驚いてしまった。

だれも聞いてこなかった。
高校の話は一切出てこなくて、あいつらがどうなったのかも、知らされてない。

北斗の言葉に
ぼーっとしてしまっていると、

「ママ、そこにいるんでしょ？」

北斗がそう声を出した。

「…あら、バレちゃった？ふふ」

笑いながら泣いている。
隠すためか、バレてないとおもっているのか。

「…ねぇ、大我、北斗。おばあちゃんのところで住まない？」

おばあちゃんのところ。
あそこは空気が綺麗で、
都会のようなうるささはない。

そこでやっと母さんに伝えた。

「…俺もう、あの高校には行きたくない。」

「じゃあ、決まりね。家の中のものはママとジェシーでやるから、先に北斗と2人でおばあちゃんのところ行きなさい！」

話が早すぎじゃないか？

不思議に思ったけど、北斗はニコニコしていた。

なんだろう、
罠にはめられた気がするのは。

でもそれ以上に安心感があった。

北斗も母さんも笑っている。
おれも自然と笑みが溢れた。

ーーーー

「…大我、大丈夫？」

「うん、はぁー、ちょっと疲れたけど大丈夫。」

まだ慣れない体だけど、装具や杖を使えばある程度は歩ける。

新幹線がいい、と俺がわがままを言ったから。

「景色綺麗だね。」

「うん。」

「北斗、もう俺大丈夫だよ。息を吸うのも吐くのも。苦しくない。」

「うん、良かった。」

そうして2人で笑いあった。

end

俺原記念日→いじめ防止対策を考える日:9月28日

俺らまだ原石 amethyst 【2】