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Side Hokuto
あの事件から2ヶ月経つ。
大我は被害者として、警察の捜査に何度も何度も
協力していて、見てるこっちも辛かった。
でも、退院してからの兄は我慢強いのか、
無理しているのか、悲しそうな表情をしなくて。
1番の被害者である大我がそんな調子だったから。
それに、俺は2人の死を忘れるようにバイトをして、2人のいない生活に慣れない毎日に、大学のことで精一杯で。
大丈夫だろう。
なんて思って、俺は大我としっかり話していなかった。
・
バイトがなくて、早めに家に帰れるから、
今日は大我の好きなトマトで何か作ろうと考える。
でも、冷蔵庫の中身を思い出せない。
家に一度帰って、確認して、
もしできたら大我と2人で買い物に行こう。
「ただいまー。」
最近は事件1週間後に比べて、会話ができるようになってきて、事件前の時と同じような空気感が俺ら2人の間では漂っていた。
あの事件の夜の日の兄の姿はなく、会話は少なくても、2人でいることに緊張は覚えない。
互いに「おはよう」「おかえり」「ただいま」
くらいの挨拶は自然にするようにもなって。
でも、今日はおかえり、という優しい声が一切聞こえてこない。
あの時と同じ、また嫌な予感がする。
恐る恐るリビングへ入ると、
倒れている姿が目に入った。
「え、たいが、大我！」
その状況に脳の思考回路が
止まってしまいそうになる。
けどそれは大我の周りに落ちているもので、止まらずに回り続ける。
彼が倒れている周りには薬瓶が落ちていた。
「ねぇ、大我！これ飲んだの？」
声をかけながら、一度妙に冷静になる。
声をかけていてもしょうがない。
病院に行かなくてはならないのだ。
救急車の番号を震える手で押す。
「はい、火事ですか？救急ですか？」
「あ、え、えっと。」
「大丈夫です。落ち着いて。」
「…はい、あの、救急です。」
「住所はどこですか？」
「東京都ｰｰ区…」
「どうしました？」
「あの、兄が薬を大量に飲んだみたいで…」
「お兄さんは、何歳かな？」
「えっと、23歳です。」
「あなたの名前と電話番号を教えてください。」
「松村北斗です。080…」
「うん、わかった。今から救急車向かわせます。」
「お願いします。」
不安で不安でたまらなくて、
救急車が来る、と知って安心で足の力が抜けてしまった。
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作者名：Moku | 作成日時：2020年5月23日 8時
