俺らまだ原石 garnet 【1】 (ページ20)

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Side Hokuto

電話を繋いだままだったからか、
誰かが倒れた、と思わせてしまったらしい。

「大丈夫？」

「…あ、すみません。大丈夫です。」

「うーん、なんか心配だな。電話繋いどくね。」

「え、いや、迷惑ですから。」

「ううん、大丈夫。」

「お兄さんの状態わかる？
どのくらい薬を飲んだか、とか。」

そんなことを言われても、わからない。

うちの兄は、錠剤が飲めない、とずっと言っていた。

苦手な錠剤をこんな大量に飲むほど、
死にたかったのか。

薬を大量に飲んだはずの兄は、
気持ちよさそうに眠っていた。

「わからないです。」

「飲んだ薬は、風邪薬とかかな？」

瓶を見る限り、風邪薬だと思うけど…

…いや、風邪薬を飲んだだけで、眠るか?

「あ、あの、風邪薬だけじゃないかもしれません。」

そう電話のお兄さんに言いつつ、周りを見る。

やっぱりそうだ、これだ。

父さんの家系はあまり腎臓が強くなくて、
父さんはいつも薬を飲んでいた。

あの事件以来、まだ心も落ち着かなくて、
家の片付けはしていなかったから。

薬は全部おいたまんま。
多分そのひとつに、降圧剤がある。

それが原因で意識がないのかも。

「…降圧剤、飲んだのかも。」

「降圧剤？」

「父が腎臓が悪くて、そのための薬が家にあるんです。多分、それも飲んだんだと思います。」

「わかった。救急車の人に伝えておくね。
大丈夫。落ち着いて。もしできたら、保険証あると便利だと思う。もうすぐ救急車も到着すると思うからね。」

なんだか、電話から聞こえてくる声が安心感を与えてくれて、とにかく、兄の部屋に保険証を取りに行く。

そして、彼の部屋を開いた瞬間、また絶望が訪れる。

ーーーー

作者より

普通考えれば、短い時間であれば、そんな薬の効果すぐ現れないだろ！と思った方大正解です。
ただ、北斗くんは今現在(今回のお話までは)大我くんがどのくらい前に薬を飲んだのかもわかっていないので、まぁ謎に思う展開ではないはず。うん。大丈夫。

救急の電話の相手も普通はこんなしないと思いますが
あくまでもフィクションです。