俺らまだ原石 garnet 【1】 (ページ18)

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Side Hokuto

「ほくちゃん、落ち着いて聞いてね。」

大学生になって、未だにほくちゃん、と呼ばれているのが恥ずかしかったけれど、

いつも優しく話しかけてくれるばあちゃんの声が
今日は酷く冷めきっていて、そんなこと気にしていられない。

なんだか、嫌な予感がする。

そして、いつもは当たらない予感は
稀に当たったりする。

「…お母さんとお父さんが亡くなった。」

言葉が出なかった。
どういうことなのか、何も理解できない。

この時間、俺はバイトの帰り道。

家には、母さんも父さんも、兄の大我もいる。

家にいるなら事故なんてあるはずがない。
なんで亡くなるなんて、そんなことが起こるのか。

俺には理解が追いつかなかった。

頭の整理がつかないまま、
様々なことが語られる。

強盗犯が我が家に入った。

ナイフを持って入ってきた犯人は夕食を食べていた、父さん、母さん、大我を順番に刺していったと。

父さんも母さんも大量出血による、失血死だったと。

そんなことを聞かされて、真っ暗だった。

夜の暗さもあったけどそれだけじゃない。

どんなに光が見えても多分、あの時の
俺には何も見えなかったと思う。

ばあちゃんの泣き声も聞こえてきたけど、
言葉が見つからない。

でも、１つだけ希望があった。

「大我は、命に別状ないって。」

ばあちゃんが泣きながら必死に伝えてくれた
その一言が、俺にとっては唯一の救いだった。

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病室に訪れた俺は、驚いた。

変わり果てた兄の姿。

綺麗な金髪の髪はボサボサで、
綺麗な瞳には誰の姿も映ってないようで。

「…大我。」

ほとんど話さない彼の名前をいつぶりに面と向かって呼んだだろう。

それももうわからないほど、
彼としっかり会話をしていない気がする。

「…ほくと、ごめん。」

彼が謝っている意味を、考えたくなかった。

でも、想像できてしまう。

母さんも父さんも、死んだんだ。
俺だけ生き残って、ということ。

そんなことは思って欲しくない。
大我が生きていてよかった。

それを言葉にする前に、俺は大我の前で泣き崩れる。

でも、彼は俺に何も声を掛けてこなかった。

昔だったら、泣いている
俺のことを必ず慰めてくれたのに。

幼い頃から、憧れていた兄の姿は全く見えず、

真夜中の真っ暗な病室の中で、
俺の泣き声だけが静かに響いた。