俺らまだ原石 garnet 【1】 (ページ48)

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Side Taiga

なんだかさっきはふわふわしてたけど、思考がはっきりしてきて、そういえばこの黒先生、北斗が階段から落とされた時もお世話になったことを思い出す。

俺が北斗の目が覚めるまで病院にいる、と言って聞かなかったのを、黒先生は許してくれたんだ。

北斗は最近も会ってるって言ってたことを思い出した。黒先生は優しい雰囲気を纏っている優しい先生。

質問に答えながらそんなことを考える。

「じゃあ、手足見ていくね。」

「両手あげてみようか。」

なんだかドラマで見たことのあるような、
北斗も同じことをあの時聞かれていたような…

先生に言われて、その言葉通り、手を挙げる…

挙げようと思った。

でも、右手だけ、降りてきてしまう。

「難しいかな。」

「…はい。」

「右手は、麻痺が残ってるみたいだね。」

先生が説明してくれた。

階段から落ちた衝撃で、
脳に影響があり、麻痺が残っていると。

そして、加えて告げられる。

「長く眠っていたから、少しずつ体を動かしていくけど、多分、右足も麻痺が残ると思います。ゆっくりリハビリ頑張っていきましょう。」

「わかりました。」

何故だかわからない。
何が「分かった」のか。

でも、その時、俺は落ち着いて、そう答えていた。

・

先生が、病室から出て行ったあと、
少しして、ドタバタと両親が入ってくる。

「ごめんね、大我。本当に。」

「いや、大丈夫。
俺が言ってなかったのが悪いんだから。」

「…本当に、悪かった。また同じことしてしまった。俺らが、いや俺が悪い。」
「北斗にも、大我にも。」

こんなふたりを見たくなかった。
だから、だから、言いたくなかったんだ。

北斗の時も、後悔していたのを知ってる。
夜中に2人で話し合っている声があの時期毎日毎日、聞こえていた。

母さんは、声を抑えるように泣いていて、
父さんは、静かに泣いていた。

「お願いだから、責めないで。」

2人の目をしっかり見て、伝える。
そうすると、「うん。」「わかった。」

あまり信用のない声色で帰ってきた。

「…北斗大丈夫？」

「あぁ、大我がね、階段から落ちたって聞いて、一緒に病院に来たんだけど、目が覚めないって聞いてね…」

母さんが泣き始めてしまった。
そんなに大変な状態だったんだ。

だれにも迷惑かけまいと、
隠していたのに。結局こんなことに。