75 . side S # ページ35
「 翔、サッカーしてから勉強しようぜ！」
いつものメンバーからサッカーに誘われたが今はそれどころではない。
「 ごめん、勉強するから今日はパス！」
「 なんだよ〜。お前も領も真面目だな、ほんと。」
「 あったりまえだろ！俺、単位危ないんだよ。」
「 わかったよ。テスト終わったら強制参加させるからな！ 」
「 わかったわかった！じゃあな！」
教室からバタバタと出て行く友人を見送って図書館へ行く準備をしていると「 翔、」と声をかけられた。
「 あ、領。今行く。」
「 僕の家、今日は誰もいないし静かだから家で勉強しない？」
領の家は俺の家とは反対方向だけれど人がたくさんいる図書館よりも静かだ。
やっと話せる、と思いながら「 うん、行かせてもらう。」と返事をした。
校門をでて、蝉の声がミンミンと聞こえる道を歩く。
「 蝉って姿は見えないのに木のいろんな所から声が聞こえるよね。なんでだろ。」
「 木と同じ色してるから見つけにくいだけじゃねーの？」
「 うん、たしかに。そうかも。でもさ、見ようとしないから見えないこともあるよね。」
時々、領は難しいことを言う。
言っていることはわかる。
でもどうして、そんなことを言うのかはわからない。
そんなことはよくあって、静かに難しい話をする領を見ているのは嫌いじゃなかった。
「 智。」
「 …いきなりなに、、」
「 翔は智のこと気にならないの？どうしてなにも言わずに引っ越したのか。」
「 あれは、家の都合だろ。」
「 黄色いテープが付いていたのにただの引っ越しだと思う？」
領も気付いていたのだ。
朝はあんなに領と話したいと思ったのに。
聞きたくない、気付きたくない。
口に出してしまったら気付かないふりはできない。
「 昨日夢を見たんだ。小さい時の。なんで忘れてたんだろう。」
「 智が何も言わずにいなくなったこと？本当のことを言うと僕も忘れてた。
”智”っていう存在が頭の中から抜け落ちてた、って表現が正しいけれど。」
領の言葉に何も言えなくなって、前だけを見て歩く。
さっきまで頭の中まで響くように聞こえていた蝉の声が気にならなくなった。
認めたくなかったのだ。
智くんが突然いなくなったことに違和感を感じながらも
その気持ちに蓋をしてみないふりをしていたという事実を。
76 . side S # ＿3/22→←74 . side S #
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美唯 - 続き読みたいです。今さらだけど更新してください (2017年5月17日 16時) (
レス) id: 9da5bd590f (このIDを非表示/違反報告)
もく(プロフ) - サンリオさん» サンリオ様、はじめまして。コメントありがとうございます。これからもゆっくりですが頑張って更新していきますのでどうぞよろしくお願い致します。もく (2017年3月1日 1時) (レス) id: 56b640f67e (このIDを非表示/違反報告)
サンリオ - もっと続きがみたいです。これからも頑張ってください！ (2017年2月27日 14時) (レス) id: ab973c591a (このIDを非表示/違反報告)
もく(プロフ) - はるさん» はじめまして、はる様。コメントありがとうございます。とても嬉しいです。拙い文章で読みにくいところも多いと思いますがこれからも頑張りますのでぜひ続きも読んでいただけたらなと思います。素敵なコメント、本当にありがとうございました！もく (2016年12月10日 11時) (レス) id: 646bfe1cfb (このIDを非表示/違反報告)
はる - 初めまして。こんなに優しくて情景が思い浮かぶ作品に出会えて本当に嬉しいです。登場人物すべてが魅力的です。大野くんが抱える闇が何なのか凄く気になって続きが楽しみで仕方ありません。ずっと応援してます。 (2016年12月8日 23時) (レス) id: 8c1ca74d4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もく | 作成日時：2016年10月23日 19時
