ドラマティック・ラブ【中原中也】

Dramatic＊19 ページ19

｢俺……何やってンだ……？｣

部屋に戻り、ハッと我に返る。

俺はさっき、確かにAを抱き締めた。付き合ってもないのに。

俺の行動に、きっとAはひいただろうな……結局、昨日の御礼も言えなかったし。

如何してしまったんだろう、俺───


休日前の金曜日、今日の佐野は凄くご機嫌斜め。

『佐野、今日男の人と飲みに行くからって浮かれてちゃダメよ？』

｢分かってますよぉ、私そういうところはちゃんとわきまえているので！｣

『そう、なら心配ないけど。』

佐野のことだし、明日また会社出勤の時、相手の男の人と飲んでどうだったか聞いてみよ──


｢あ、いらっしゃい。なんかちょーっと久しぶりかな？Aちゃん。｣

『”ちょっと”ね。店長っ、いつもの1つ！！』

会社帰りに少し久しぶりに寄った、”forte”。

今日は、いつもみたいに酔い潰れるまで飲みに来たわけではなくて……

『ねぇ店長、私ね昨日急に中原さんに抱き締められた。』

｢えっ、ちょっ、それどういうこと！？｣

ざっきーは、グラスを布巾で拭きながら食い入り気味に私の話を聞いてくる。

『あのね、昨日住んでるマンションに帰ったらさ、前言ってたあの例の元彼が私の居場所を位置情報アプリで特定していたみたいなのよ！！』

｢えー！それストーカーと言っても可笑しくないぐらいヤバイよね！？｣

『で、元彼と部屋の前でゴタゴタしていたら中原さんが丁度帰ってきてね、なんとか元彼を追い払ってくれたのよ。その後に中原さんに御礼を言ったら急に何も言わずに抱き締められて……
私、中原さんに抱き締められた時、凄くドキドキしちゃったのよ、もしかしてこれって……』

｢恋だね、うん。｣

ざっきーは、真顔でそう言いながら頷いた。

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