【文スト】文豪学園男子寮3【学パロ】

第74話 ページ9

『ごめんね、中也。お婆ちゃんが突拍子のないことをして……』

｢手前が謝ることじゃねェよ。全く……孫をぶとうとかするやつ、生まれて初めて見たわ。｣

お婆ちゃんが帰った後、私は急いで冷蔵庫から保冷剤を取り出し、お婆ちゃんの平手打ちで赤くなってしまった中也の頬を冷ましていた。

｢そンなことよりさ相坂……手前、婚約者に会いに行くためにフランスに行くンだな。｣

『うん……ごめんね、あの時言えなくて。』

私が謝ると、中也は私に背を向けたまま、“大丈夫だ。”と言ってくれた。

中也の“大丈夫だ。”と言う言葉に少し重さを感じた。

これは、私のせいだ。

もっと、早く中也にフランスに行く本当の理由を言っとけば良かった……

そうしたら、中也も打たれなくて済んだのに。

｢……泣いているのか？｣

『泣いてないよ。』

中也が後ろを振り向いたのと同時に、顔を横に向けた。

この時顔を横に向けたのは、少しずつ出て来る涙を隠すため。

心が落ち着かない夏休み──私は、ある決断をした。

第75話→←第73話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す