Sweet memory Ⅳ【中原中也】 (ページ20)

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memory#80 ページ20

高校生になりたての春の日、私は蛍光灯をスポットライト、筆箱はマイク代わりのある人と出会った────

｢ああああ！なんで時雨アイツは、こういうときに限って寝坊するかなぁ！！｣

『小説の締め切りが間に合わなくて、徹夜で必死にやったんだって』

｢計画性が無いのがよく分かったよ……｣

あれから6年、私達はそれぞれの道へと歩んだ。

あすかは、栄養士に。時雨君は小説家に私は美術家で、中也君はとある有名プロデューサーに目を付けられ高校卒業と同時に、ヨコハマから違う場所に上京。

今では有名な歌手となっている。

｢中也遅いなぁ、アイツもアイツで何してるんだか………ん？誰かが歌っている声が聞こえない？｣

『本当だ………』

“黒い力に押し潰されそうになった時も
水色の海に染まる時も

辛い日々の中で巡り会えた君

鈍感な君切なく淡い気持ち
僕の心に君の笑顔

君をずっと追い掛けている………気付いてよ
My princess＿＿＿”

『あすか、私この曲知ってる。この曲を歌うのは………』

｢“俺しかいない”だろう？｣

振り返ると、其処には更に大人になった中也君がいた。

『お帰りなさい……！』

｢只今、A。｣

私は、直ぐに中也君に抱き付いた。

高校生の時、私は沢山傷付き、沢山幸せを貰った。

それは今では、甘い思い出(sweet memory)となっている────

End