memory#19 ページ20
気まずい雰囲気の中で、私と立原君は学校から遠く離れた駅のベンチで座っていた。
沈黙の時間は何だか長くじ、どう話題を出せば良いのか分からない。
『あの……』
「あのさ……」
またまた運悪く、今度はお互いの声が重なってしまい、某お笑い芸人の“どうぞ、どうぞ”みたいな感じになってしまった。
立原君は、延々と続く“どうぞどうぞ”が嫌になったのか、遂に“アンタ先刻、泣いていただろう?何でだよ”と言った。
『私……先刻、泣いていた……?』
「ああ。」
言われてみると、確かに私の頬に小さな雫が伝った気がした。
私、泣いているんだ…………あの時、彼が歌った曲の意味を聞いて、勝手に彼が思い寄せている、私が知らない女子に嫉妬して。
「おい、如何した?」
鞄にはまだ、中也君の横顔が描かれたスケッチブックが入っている。
私は、今すぐにでもそのスケッチブックを破って、何処かに捨てたくなった。
『何勝手に浮かれていたんだろ、私………』
おでこを押さえながら、私は立原君に聞こえないように小声で呟いた。
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作者名:もえ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mokomokohi4/
作成日時:2019年1月1日 21時