この恋は、秘密【太宰治】

Secret＊15 ページ16

一方その頃、屋敷の方では大変なことになっていた。

｢A……あの子ったら、どこに行ってしまったの……｣

｢落ち込むより先に警察へ連絡だ！！無事でいてくれよ……A……｣

混乱するAの両親を前に、昨日あれから櫻川家の屋敷に泊まり込んだ中也が｢奥様、旦那様、俺が探しに行きます｣と、言った。

中也のその言葉を聞いた二人は、｢来客でもあり、近い将来、Aの夫となる中也さんに申し訳ない｣と言ったが、中也は｢Aの夫となる者だからこそ、彼女を探しに行くんです｣と言って、屋敷を後にした。


｢この屋敷はね、旧友の二人の内一人が、貸してくれた小屋で、もうAと住めるような準備は出来ているのだよ。｣

『本当ね……まるで最初から私達が住んでいたみたい。』

｢A、ずっとそのドレスを着ているのはしんどくないかい？｣

『まぁね……慣れては来たけど、走ってここまで来たから裾辺りが汚れてきてるから、少し着替えたい気もするけれど……服を、あの屋敷に全部置いてきてしまったわ。』

｢どうしよう｣と悩むAに、太宰は｢はい｣と彼女に服を渡した。

｢Aを迎えに来る前に、服屋で何着か買い出ししてきたんだ。ピッタリだと良いんだけれど……｣

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