練度77 ページ30
……静かな寝息だ。
骨喰は眠り続ける兄弟の口元に手をやり、その息を確認した。
確認しなければ不安になるほどに静かだった。
自分と似ている顔立ちは、喋って動かないとますます瓜二つに見える。
傷だらけだった体は綺麗に治っているのに目覚めないのは、かつて鶴丸がそうであったように、折れる寸前だったからか。それとも他に原因があるのだろうか。
本体の鯰尾藤四郎は没収されてしまった。本丸の刀剣たちが、側に置くことを許さなかった。
仕方ない。仕方のないことだ。
結局、ひとまず鯰尾の目覚めを待つことを妥協してくれたのだから、感謝こそすれ恨み言など一切ない。
骨喰が鯰尾のそばにいるのも、監視と銘打って許してくれた。
ぺたぺた
すたすた
二つの足音が近付いてくる。
この部屋に用だろうかと腰を開かせたところで、静かに襖が開いた。
燭台切光忠と今剣だ。少しだけ警戒した。
二振りは同じ第二部隊の仲間だけれど、鯰尾を引き渡すべきと主張する刀剣でもある。
「骨喰くん、お昼食べてなかったろう？」
「きょうのおひるは燭台切のちゃーはんですよー」
少し声をひそめて、炒飯の乗った御膳台を運んでくれた。
蓮華が二つと小さな取り鉢もある。
「もし食べてる時に鯰尾くんが目覚めたら、分けてあげるといいよ。あっ食べられなかったらお粥でもなんでも作るから言ってね」
にこりと笑う片目を見つめた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「はやくめざめるといいですね」
眠る鯰尾の顔を覗き込んでいた今剣の言葉に表情が強張る。分かりやすい変化はなかったかもしれないけど、ドキリと心臓が跳ねた。
どういう意味だろう。純粋な心配か、それとも___。
きっと何気ない、他意のない言葉だ。
それなのに、声が絡まって出てこない。
仲間のことは好きだ。信頼している。
でもたとえ同じ主に仕えていなくとも、目の前の兄弟だって大切なのだ。
そんな骨喰に気を利かせた燭台切が今剣を伴って出て行った。
「ゆっくりでいいからね。あんまり思い詰めちゃ駄目だよ」
パタンと閉じた襖。優しい言葉が胸に刺さる。
炒飯をすくって一口食べた。
「……おいしい」
まだ主や伽羅ちゃんほど上手ではないけど、などと謙遜する燭台切だが、そこまで味に細かくないタイプの骨喰には変わらないくらい美味しく感じた。
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水月鏡像(プロフ) - 私、鶴さん大好きなんですよね！鶴さんって無邪気な真っ白びっくり爺の面と狡猾な平安刀、傲慢な神としての面が混ざり合ってできているのでそこが魅力なんですよね〜〜！ちなみに、白髪キャラってのも好きなんですよ！好きの宝石箱っすね。 (2020年12月16日 20時) (
レス) id: e9ae4c526b (このIDを非表示/違反報告)
イマツギ(プロフ) - 早く続きが見たいですね！更新頑張ってください！ (2020年12月16日 20時) (レス) id: e522761e6b (このIDを非表示/違反報告)
水中花 - すっごい面白かったです〜！！続きが楽しみです。 更新頑張ってください！ (2020年11月6日 21時) (レス) id: 06b16b9783 (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - 次はどんな展開になるんだ！とわくわくしながら読んでおります。 (2020年10月31日 16時) (レス) id: f1fabf8b23 (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - コアさん» 推しの鶴丸褒めてもらうのとても嬉しい！更新スピード落ちてるけどゆったりお楽しみを (2020年10月30日 15時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mokohu | 作者ホームページ：http://nanos.jp/atlant2d/
作成日時：2020年8月23日 14時
