【刀剣乱舞】成り代わり鶴が本丸で奮闘する話【２】

練度68 ページ21

それでも、と吐露するのを私たちは静かに聞いていた。

〈虎徹を見たら贋作と思え〉とは有名だ。

そのせいでどれだけの真作が贋作とされてきただろう。
虎徹の贋作を打った刀匠の中には偽物の押形を大量に遺した愉快犯もいる。

「虎徹の真作として、贋作を認めるわけにはいかないんだ……！」

「「まあそうだろうな」」

「え」

多少なりとも窘められるとでも思っていたんだろうか。ゆるっと肯定した私達に鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした。

虎徹を打った刀匠、長曽禰興里が生きた時代は江戸時代前期だ。
にも関わらず蜂須賀虎徹という名の刀が歴史上に出てきたのは昭和になってから。
箱入りだし名将に振るわれたわけでも、変わり種を切ったわけでもない。
ある意味、付喪神として成るには物語が薄い。
たしか虎徹の真作には幽霊じゃないけど石灯籠切った打刀もあったはず。

にも関わらず刀剣男士となったのは蜂須賀虎徹。
だからこそか、蜂須賀虎徹という刀剣男士は「蜂須賀虎徹」というより「虎徹の真作」に重きを置いて顕現した。

真面目で真っ直ぐな気性の彼は責任感も強い。

「君は自分の誇りだけじゃない。贋作とされ、語られることのない歴史に葬られてしまった真作たちの誇りをも背負っているんだろうなぁ」

「もっと気楽に生きろ、と大包平になら言うんだが」

「君の性分では難しいだろう。だがな蜂須賀、君が全ての虎徹の真作を背負っていようと、長曽祢に全ての贋作を背負わせるのは別問題だ」

分かるな？と問えば蜂須賀は控えめに頷く。
こういう仕草はちょっと幼くて可愛いんだよなぁ。

「無理に仲良くなれとは言わんさ。ただ君が、もしくは彼が、相手と向き合おうというのなら、「虎徹の贋作」だけではなく「近藤勇の虎徹」としても見てやりな」

まあ長曽祢も一言多くね？って事はある。それは蜂須賀の神経逆撫でるぞ？って。
蜂須賀が真作と口にするのはその矜持と誇りゆえだが、彼が事あるごとに贋作と口にするのは何故だろう。

「こうして……同じ本丸に顕現したからには、同じ主に仕える刀として向き合うべきなんだろうね」

「一緒に茶でも飲んだらどうだ？」

そこは酒じゃないのか？と思ったけどうちの蜂須賀はアルコール3%で酔う下戸だった。

「拳で語り合えば？」

蛍丸、静かだと思ったらそんな少年漫画みたいなことを……え、ちょっと蜂須賀はなんでいい考えだ！みたいな目ぇしてんの？手合わせってことじゃないよね？
練度差考えてあげて？

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