静かになるまで○分かかりました ページ9
出て行った銀の背を見送ってしばらく、やや呆然としていた私を正気に戻したのは様子を伺っていた従業員の声だった。
「A様!ご無事ですか?」
「えぇ……なんかもう、何が起きたのやら」
疲れた。
ドっっっと疲れた。
この1時間で一週間分くらい働いた気がする。
妙に静かな嵐だった。
ふうと大きなため息を吐いて椅子にもたれた私を心配するように、あわあわフヨフヨと周りを飛んだら跳ねたり漂う可愛い小妖怪たち。
暖かいお茶をいれてくれる従業員。
何はともあれ、今は可愛いこの子たちが退治されずに済んだことを喜ぼう。
「これからどうなるんでしょう……」
「そうねぇ」
ズズッといれてくれた茶を啜りながら呟く。
また、と言っていた。それも非番の日にということは私たちを見逃し続けるということか。
見逃してもらえる事は、もろもろ考慮して正直なところとてもありがたいことだ。
「読めないわぁ……」
けれど山姥切長義と名乗ったあの刀の意図が読めん。見逃すメリットはなんだ。
油断したところをバッサリやられるのが一番怖いのだ。
以前会った髭切やにっかり青江程度ならいけるが、あの山姥切はダメだ、守りながら剣戟であれには勝てない。と冷静な思考が判断する。
「……あの刀、本当に刀剣男士だった?」
「どういう意味でしょう?」
「根本……魂?が刀剣男士とは思えないくらい強いというか」
「うーん、ほんの少し……例えば秋田ごしにA様を感じる時に似ているかなとは思いました」
秋田ごし……?
秋田は私の力で顕現、その身を保てているので秋田を通して私の力を感じ取る事はおかしくない。
けれどそれをあの刀剣男士に感じるとはいったい何事だ。
「もしやお知り合いかと思ったのですが……」
「記憶にない……なのに瞳の色まで知られてるなにこれコワイ」
「あれじゃないです?万屋街の玉藻前時代」
ヴァッッ
従業員が悪気なく人の黒歴史を抉ってくる!
第一あの時ですらカラコンしてたからね。瞳の色がバレるわけがないのだ。
「ああやめましょ、考えてもキリがないわ。とにかく店のことについては守りをより強固にして……避難訓練も改めてした方がいいわね」
万屋街内で店の場所を変えるとなると大変だから、とりあえずはすぐにできる対処を。
避難場所は現世がいいかな、それとも灯台下暗しで万屋のどこかにしようかな。
また来る、とは言っていたものの本当に休暇で来るとは限らないし……
なんて、思ってた頃もありました。
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翡翠琥珀@カリナと咲(プロフ) - ァ"ァ"ァ"好きぃ... (2022年3月31日 15時) (レス) @page42 id: cceed3ce75 (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - 返事がない只の屍のようだ。さん» ちょぎくんの布教が出来て嬉しいです!沼へようこそ。 (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - sesiroさん» ありがとうございます。成り鶴もよろしくお願いします (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
mokohu(プロフ) - まるさん» ありがとうございます (2021年3月5日 16時) (レス) id: 2e4fc5a96b (このIDを非表示/違反報告)
返事がない只の屍のようだ。 - はじめまして!そして完結おめでとうございます!!大好きです!!!終わってしまい寂しいですがちょぎ君、思い出して貰えて良かったね゙ぇ〜!(T△T)ズビィ この小説を切っ掛けでちょぎ君にハマりました!ありがとうございます!!(謎)これからも頑張って下さい! (2021年3月5日 12時) (レス) id: 2157a47614 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mokohu | 作者ホームページ:http://nanos.jp/atlant2d/
作成日時:2020年12月5日 14時